2013年2月15日
先月、すっかりご無沙汰のお役所時代の同僚(1年後輩)から、メールがありました。当方から、コラム掲載に対する事前了解の依頼をしたことに対するものです。
その内容は、3年近く年金記録問題に関わった経験から得た彼の思いでした。今後の社会保障行政を担うべき行政担当者の心構えとして、良いものと感じたので、その内容を要約してご披露します。
「どうせやらざるを得ないなら、徹底的に効率的にやってやろうと思いを定め、ビジネスアウトソーシングの専門家の力を借り、年金の知識がない者でも作業ができるように、工程を極力細分化し、1人当たり覚える項目を減らし、また、ヒューマンエラー防止も兼ねてシステムで作業が可能なことはシステム化するなど、行政時代では思いもよらないような手法でやってみました。結局、当初予想のコストの2/3程度で収まりそうなところまできました。
役所仕事で、当初の想定よりもコストをここまで減らすというのは、おそらく北川さんが国立病院機構でやっておられた調達改革以来ではないかと思います。制度改革しかやったことのない我が身にとっては、大変荷の重いミッションでしたが、振り返ってみれば、こんな大規模なプロジェクト・マネジメントの経験ができ、大変、勉強になりました。
それにしても、この3年間の経験を通じ、改めて、現場を考えずに(敢えて見ようとしないで)、制度ばかりをいじってきた過去の行政の罪の重さを痛感しました。支援費にしても、年金記録問題にせよ、問題の根っこは同じですね。『まずは、実務を考える』だと思いました。」
彼のような現実を見つめ、動かそうとする行政官が増えて行けば、今のところ理念先行か現実追認で、現実的な問題解決の端緒も見えない社会保障について、新たな切り口が見つかるかもしれません。
これからの展開に期待です。
さて、今回も前回に引き続いて、精神病床の分化についてです。前回は政策論として、今回は、上記でご紹介したような、厚生労働省の最も弱点とする「現場、実務がどうなるか・・」との視点から、既に在院患者減が進行し始めた精神科病院の行動について考えてみます。
いわゆる政策は、現場を動かす、現実を動かすための手段の一つでしかありません。現実が動かないような「綺麗ごと」の政策や、現実に合わせるだけの「迎合した」政策では、何も変わらないものです。また、病院等の事業経営も、現場が何を考え、何を期待しているのかも考えずに「指示」したり、また「迎合(その場凌ぎ)」するだけでは、何も変わらないのは、政策と同じことです。
政策も経営も、大事なのは、「動かない山(現場)を、どう動かすか」と考えることです。
(今回の富士の写真も読者の方からの投稿です。)