2024年12月8日
耐震診断後、耐震補強補強のプラン確定から始まり、耐震補強工事、これに並行した改修プランの作成、改修工事と続いた一連の工事期間は2024年1月~10月の10か月でした。
まずは当時の反省からです。
工事内容を考えるに際して、役に立ったのは国立病院機構時代に見聞した病院建築の様々な知見です。面白いと思った事例を活かし、呆れた事例は自分で起こさないようにと、細部の情報はWEB検索を行うなどして、プランの検討・調整を進めていましたが、今振り返ると大事なことを見落としていたことがわかります。
これらの基礎知識を家族が共有していないという単純なことですが、これが様々な軋轢を起こしました。
今回の連載を始める際に、共有空間のDKテーブル(写真)で長女他に「君たちのことも書くからね。いろいろと反対されたこと。」と伝えると、「それなら、あなたから受けた数々の暴言も 私に書かせてほしい。」と反撃されました。
そう言われて、イライラしていた頃の自分を思い出しましたが、その多くは、自分の知識と相手の知識の格差に起因していると今回思い至りました。
当然、当方がイライラいていれば、相手も同じくイライラするはずですから、お互いに不幸な時間が続いたことになります。今後記載予定の危機回避の対策も多くは不要だったでしょう。基礎知識が同じなら、検討過程ももっとスムーズで、楽しくなったのでしょうが、この点の努力を欠いたのは大きな反省点です。
奥方からも・・「でき上って見れば、成程と思うものも多いが、途中ではイメージがよくわからないのでネガティブになった」と言われ、さらに「それでも、そこまで考えなくてもとか、言われなくてもと思ったことはある」との言葉をいただき、聞こえないふりをするしかありませんでした。
皆さんが大規模改修を行う際には、個々の内容の検討に入る前に、家族・関係者の基礎的知識のレベルを一致させる努力は忘れずに。その後の過程の軋轢は減り、満足度は上がるでしょう。
なお、今回の連載は、いずれ生じる未来の再改修に向けて、家族の知識レベルを一致させることも目的とし、記載内容に家族からクレームが届いたときは、公開後に修正等することも約束~家族の「ガス抜き」にも配慮しています。
「あの時は○○だった」と自分の口で言うと・・また軋轢が生じるのは確実ですので(笑)
<コラム「自己の検証」の初期段階で記載した内容等から、今回改修の参考とした事例>
1 当時、面白いと思った点
〇診察室は出入口が安全確保等の観点から患者用とスタッフ用に別にあり、その後の移動動線も患者とスタッフが極力交錯しないようにつくるという原則(動線重視)
〇従来、職種別だった事務室を原則大部屋に集めた結果、全体の動きが把握しやすくなり、職種間の情報交換も活発になり、建築コストも下がったという事例(共有空間重視)
〇病院設計段階で、院長が外観のデザイン面で拘った窓部の形状について、若手女性建築士の簡素な案で、院長の満足度も上がり、建設時間も短縮・コストも下がったという事例(シンプル重視)
〇病院病棟が広くなり、どこに居るのかわからくなるかも・・というスタッフの心配を、ポイントとなる壁の壁紙の色分けで解消した事例(同じコストで少しの工夫)
2 当時、呆れた事例
〇事前に助言したにも関わらず、病院が設計変更せず強引に進めたエレベーター周囲の工事。竣工後、エレベーターにストレッチャーが入らず、壁を壊してやり直したという事例(動線軽視)
〇出身母体の複数の大学医局の意向を聞いて設計したため、いかにも使いにくそうな病院の医局周囲の設計。しばらくして、現場の不満もあって間仕切等を改修した事例(共有空間軽視)
〇病室が法令上必要な面積を下回っていた事例や病室内のコンセントの絶対数が足りない・設備を置いたらコンセントが隠れて使えなかった事例(設計時・施工中の見落とし)
〇できあがった放射線診断室にCT・MRIを入れる搬出入口がない。その診断室の壁には必要な放射線を遮蔽する機能が欠損していた事例(設計時・施工中の見落とし)