実学1:小さな組織と大きな組織

2016年4月15日

医療介護事業の分野でも、他産業と同じく、小さな組織もあれば、大きな組織もあります。他産業では、小規模のものに問題が多いように思います(最近の大手企業の不祥事、不振を見ると自信がありません)が、医療介護産業では、どちらかと言えば大きな組織のほうに課題が大きいように感じます。
現実に大型法人から分社化した小会社の運営に助言している立場から見ると、小組織のほうが「組織統治」が容易ということが、主たる要因ではないかと思います。もちろん、小組織がうまく行くには、それなりの工夫が必要ですが、同じことを大組織でやってたとしても、同じ効果を出せるとは言い切れません。

 

その要因は統治する側=経営層の力量が、大きな組織では飛躍的に高いものが求められる点にあると考えます。

個人の実感として、1人の管理職が適切に管理できる人数は、10~20人程度が限界ではないかと思います。したがって、10人規模なら、自営業体制とも言える1人の優秀な管理者がいれば十分ですが、その規模が大きくなると、管理者の補佐役が必要となり、例えば100人規模になると、10人×10単位~10の小集団を管理するため20人の管理者が必要となり、また、その10人の管理者を指導する仕組みが必要となります。この「組織管理のための組織」には、個々の管理職の力量はもとより、適切な組織倫理・ルールやそれを動かす経営層の力量などが必要になります。

経営不振の民間医療介護事業の中には、こうした「組織管理の組織」が未整備で「大きな自営業」とも言えるものもありますので、数字上の改善ばかりでなく、並行した組織体質の改善が必須となります。しかし、経営層が、「組織の体質改善」と口で言っても、大きな組織では、実際には、ほとんど変わることはありません。悪い体質と言われるものは、大概、その組織属する職員にとっては、都合の良いものとして定着しているのですから、それを変えるのは、簡単なことでないことは、誰でもわかるでしょう。

 

こうした時には、「小さな単位で改善を成功させ、それを梃子に他に広げる」ことを勧めています。
組織内には、声には出しませんが、「このままで良くない」と思っている人や、「何とかしたい」と思っている人が、必ずいるものです。その人を見つけ出し、協働して小さな改善を成功させることは比較的容易です。次に、その成功を他の複数部門に示して、「○○はできませんか」と持ち掛けると、「あの部門でできるのなら」とか言って、第2グループが動き出すものです。

これが広がれば、最後まで動かない人も、「あとは、そこだけですね・・」などと背中を押すと、全体ができることは、渋々でも受け入れるようになるものです。

 

ただ、小さな組織なら3か月でできることも、大きな組織では1年以上もかかりますが、その間、この展開に関わる責任者がモチベーションを維持できるか、全体に成果が出るのを経営層が見守れるか・・という問題にもなります。ある法人で、こうした活動を支援していましたが、活動を全体に広め始めた頃に、トップから「何も変わっていないな」と言われたことで、急速に、責任者のモチベーションが下がり、この改善活動は瓦解しました。
個人的には、残念な思いでしたが、「大きな自営業」のままでいたいトップのところでは、組織体質の改善の前に、トップの交代が必要なのだと、勉強する機会ともなりました。