現場と語る1 地方病院の将来を事務長と語る

2013年4月12日

今年の研究所のテーマ「自らを高めて 実のある時間を」に基づき、今月から、毎月1回は医療や福祉の現場に行って、改めて、自分自身の考えを磨くことにしました。

第1回目は、群馬県沼田市にある国立病院機構沼田病院です。

 

沼田病院の事務長は、私と同じ年齢で、私が国立病院機構財務部長だったときから親交があり、彼が1年間前に沼田病院の事務長に昇格したときから、いずれ行こうと思っていました。

この沼田病院は、私が国立病院機構財務部長だった頃から、山間部のへき地医療(巡回医療)の取り組みで人事院総裁賞を受けるなど、経営実績はともかく、特徴的な医療は有名でした。

また最近では、内視鏡センターを整備し内視鏡専門医による検査件数が増加中、地域唯一の放射線治療装置を整備し専門医によるがん治療を進めているなど、当時より新たな医療機能を集積して地域の評判も高まっており、さらに昨年来、病棟等の建替を目指して、1年間、病院が一つになって頑張っていると聞いていましたので、その成果を見るのも、今回訪問の楽しみの一つです。

 

午後訪問の約束ですが、交通事故による頸椎捻挫の痛みもあり、速めに東京の自宅を車(レンタカー)で出て、休みながらの沼田行です。赤城高原SAで休憩をとり、満開の桜の向こうに雪の谷川岳を望む風景の中で一服と、贅沢な時間を過ごしながらも、思ったより早く沼田に到着したので、池波正太郎氏の真田太平記でも有名な沼田城址で時間調整です。

市内の中心部にある小高い山が沼田城址(城郭は江戸時代前期に取り壊し)で、今は公園として整備されています。偶然にも桜が満開(写真)で、土日のお祭りに向けて屋台も出ていました。城址から一望できる雄大な風景に、400年以上前の歴史に思いを馳せ・・資料館も見ながら1時間を経過です。

 

病院では、国立病院らしく、屋上から病院の全景、周囲を見てから、昭和40年代、昭和50年代に建築された病棟や巡回医療に使用しているバス、最近評判となっている内視鏡センター等を見せていただきました。

その間、私が在職中に、沼田病院は病床利用率が低かったため1病棟を閉鎖したが、その後、わずかの期間で元の利用率まで低下した=当時は「病床利用率保存の法則(病院スタッフが、その利用率で良しとする意識があることで発生する現象)」と呼んでいたという昔話から始まり、

「病院の業績は平成24年度の後半で良くなったものの建替えの条件クリアには、あと一歩で足りなかった。」「そのため建築着工の正式決定は凍結されたが、とりあえず設計は進めることが認められた。」「病院のスタッフは建替を目標に頑張っており、来週の院内会議で、平成25年度前半で結果を出すように鼓舞する予定である。」「建替え後のプランとして、地域医療を支えるため、緩和ケアやアウトリート(訪問)のサービスを始めたいと、内々に考えている。」といった話を聞きました。

私からは、「次のプランがあるのであれば、早々にスタッフに示して、他の病院を見に行ったりして具体的に動き始めるほうが良い。病院のサービスや経営を良くしていくのは、最終的には、スタッフの意識・意欲の統合なので、それを高めるのが事務部門の仕事。」と提案しました。

 

一旦、病院を離れましたが、夕刻、宿泊先で、再度、事務長と合流し、温泉に入り、食事を共にし、さらに部屋で遅くまで飲むことに。その間も、病院の将来の話や、地域をどのように支えていくか、今後どういう所で働きたいか等について、彼の思いを聞くことができました。

彼のような人材が、現場の第一線で働いていることを心強く思うとともに、きっと今年度中の沼田病院の病棟建替等も実現し、数年後には地域を支える新たな展開を始めているものと楽しみに思ったところです。

 

温泉に入って彼の話を聞き、私も、交通事故で痛んだ体と心のリフレッシュができたようです。

さて、来月は、どこに行くか、考えないといけません。きっとまた、良い出会いがあるでしょう。