現場と語る4 地域を支える医療者同士の繋がりを期待する

2013年10月19日

今回、広島県歯科医師会・福山市歯科医師会合同学術講演会の後で、福山の歯科医療関係者と語る機会を得ました。

 

元々、今年の前半に国立病院機構福山医療センターで講演予定があり、その際に、福山歯科医師会の方と意見交換をする予定があったのですが、ある事情で、その講演が流れることになり、それを残念に思っていただいた福山歯科医師会のお骨折りで、今回の講演となりました。

さて、講演終了後に、福山歯科医師会の方と、来賓で講演会に来ていたお二人の国立病院機構の院長、福山医療センターで連携の中心となっている歯科衛生士の方で、食事をしながらの意見交換となりました。

 

歯科医師会の会長は、もっぱら国立病院機構の院長と話をされ、私は、学術担当の歯科医師の方、福山医療センターの歯科衛生士の方と話をすることになりましたが、お二人の年齢が若いせいもあって、楽しい時間となりました。特に、女性の歯科衛生士の方は、エネルギーが溢れるように話をされ、私も、元気をもらったような感じです。

彼女は、口腔ケアを外国で学び、広島県内の現場で在宅の口腔ケアを行っていましたが、今回の研究を契機に、福山医療センターに就職することになりました。在宅では、「何で ここまで状態が悪くなるまで ほっておかれたのだろう。」と疑問に感じていたようですが、研究を通じて、医療の関わりが始まる急性期病院においてこそ、やれることが多いのではないかと感じたのが、就職を決意するに至った理由とのこと。

こうした地域を知る有意な人材が、急性期病院の中に入り、地域の歯科医療者との連携の橋渡しになることは、地域の将来的な発展を感じさせます。

 

歯科医師会では、地域にある他の3つの公的病院との連携も模索しているようであり、何とか実現に漕ぎつけて欲しいものです。地域を支える4つの急性期病院が、それぞれ地域の歯科医師会と繋がり、入院時から一貫した口腔管理を受ける体制が整えば、地域の住民にとっては幸せな体制となります。

また、現在は手が届いていない、介護施設等への移行者へのフォローができるようになれば、各施設の能力向上にも繋がります。こうした視点は、既に歯科医師会も歯科衛生士の方も持っており、地域の歯科医師の口腔ケアの知識・スキルの向上を図りながら進めることができれば、きっと、地域住民や施設の利用者も、地域の介護事業者も、また地域の医師や歯科医師も、誰もが得をするような新しい形が出来上がるのではないかと期待しています。

 

また、来賓で来られていた院長からは、「ぜひ、今回の取り組みが、中期的に誤嚥性肺炎等の減少につながるエビデンスが欲しい。」「ぜひ、福山を参考に、当院でも同じような取り組みをしたい。」と強い意欲も出され、他の地域に広がって行く可能性も感じました。

 

学術研究ではなく、研究という形式をとったフィールドワーク~地域の関係者の繋がりを作る一種の「実験」が、こうした広がりを持つことは、仕掛人の一人としては、喜ばしいところです。

いずれまた、この地を訪れたときには、今回は立ち寄れなかった有名な「鞆の浦(写真)」でゆっくりしながら、その地の方に「口腔ケアを受けていますか」などと聞いてみたいものです。

「良くしてもらっています。」との回答を期待して。