現場と語る2 精神科病院の未来を現場の教育担当者と語る

2013年6月20日

毎月1回は医療や福祉の現場に行って・・と宣言した翌5月には、現場と語るのは、直ぐにお休みという体たらくで反省です。

こころを入れ替えて、今月は、福岡県に所在する医療法人翠会の行橋記念病院八幡厚生病院の教育担当者の皆さんと意見交換です。

 

翠会とは、今年度から関わり方を変えて、世代交代を円滑に進めるとともに、今後の精神病床の削減に向けて既存の人材の再教育を進めるという難しいテーマを担うこととしました。単なる法人、病院の経営改善ではなく、地域を支える、地域の資源を結びつけるという「地域経営」の実践の基盤づくりです。

その一環として、今回、行橋記念病院と八幡厚生病院の教育担当者 20名弱の方に集まっていただき、私から講演をして、意見交換をするという企画を組みました。行橋記念病院は、これから病棟を建築、八幡厚生病院は間もなく新病棟が完成し精神科救急を開始するという段階で、これから数年が、大事となる時期です。

 

台風が近づくなか、海の中の北九州空港(写真)に到着し、会場の行橋記念病院に直行です。

ほとんどが初めて顔を見る方でしたので、なんとなく硬い感じで始まりましたが、あとで聴くと、事前に送っていた資料が厳しい内容であったことから、相当「構えて」の参加だったようです。話の筋は簡単で、

「精神病床の削減は避け得ないことは誰もが知っているが、準備なく行えば、大量の職員解雇が起きることになる。」

「これを避けるには、地域経営等の新たな取り組みを実践できるように、病院内で働く人の知識・スキルを高める再教育を行うことが不可欠である。」

「職種別に課題は異なるが、まずは事務部門、相談部門からの改革が必要となる。」というものです。

私としては、普段の役員会等より、優しく話したつもりです(同席した東京での同僚も同意見でした)が、皆さんには、相当インパクトがあったようです。ちょうど九州に近づいていた台風のように、心の中は、穏やかざる人が多かったと思います。そのため、講演後は、硬い感じの質疑、意見交換でしたが・・・

 

意見交換の本番は、当初から、行橋市内の居酒屋での私の招宴でした。

予定されたお店に行くと、先ほどの雰囲気とは打って変わった雰囲気です。いつも思うのですが、病院にいるときは制服等のため硬い感じがしますが、食事等で会うときは普段の服装ということもあり、自然な感じで話ができるものです。

まずは、参加者の方の年齢を聞くと、20歳台から40歳台まで。残念ながら、男性がやや多めです。いつも通り、喫煙者を席に端に集めて、飲み会が始まりました。参加された方の半数くらいは、自分の本音を話されたと思いますが、熱く語る人から楽しく話す人まで・・・

 

「今後病棟を閉鎖する=人材が余剰になるという現実について、大変ショックだった。」

「地域経営への展開は、そうあるべきではと思っていたが、今日の話で、自分の考えは間違ってなかったと思った。」

「地域経営と口で言っても、実際にその部門が明確でないので、今の組織のままではやりづらい。」

「キーとなるの精神保健福祉士と思ったが、日々の業務に追われ、なかなか踏み出せていない自分の心が痛んだ。」

教育・研修の実施や結果が個人評価に結びついていないので、参加や実施にも温度差がある。」

実際にやろうとしても、情報や経験が少なく、壁に当たることが多く、横のつながりが必要と思う。」といった言葉がたくさん出てきました。

では今後、どうしたら良いと思うか・・という私からの問いかけにも、いろいろとアイデアが出て、概ね今後の進め方の合意もできたようです。何となく、お役所の時代に、喫煙所で何人かと雑談しながら、仕事の進め方を決め、周知し、その通りに進行管理をしていた時を思い出し、一人で笑ってしまいましたが・・

 

こうした、これからの社会・地域を担う、20歳台から40歳台の現場の一線で働く人たち、それを現場で教育する立場の人たちを、50歳の私が、どのように働きやすい環境を作っていくのか、一法人としてではなく、社会全体に通じる「私の世代」の責任だな とも改めて自覚する良い時間でした。

「末端こそ先端」という言葉を再度確認しつつ、皆さんとの再会を約束して、会合を終えました。

 

彼らが、これからの嵐を無事乗り切り未来に到着できるよう、私も環境づくりに頑張ることが大事と思うところです。