実学7:契約・調達改善の失敗(1)

2016年11月15日

契約・調達改善の失敗と考えられるものを今回・次回と2回に分けて示します。契約・調達改善会社の関係者から聞いたこと、自分自身の体験からまとめています。

 

 

 

1  動機の不明確な取り組み
  これは公的病院でよく起きる失敗です。
  ほとんどの公的病院は外部評価を受けるようになっています。そうした場において、先行事例を知る評価委員から、共同調達など調達・契約改善の指摘を受けることが通例となっています。そうすると、ノウハウの乏しい公的病院の本部などは、経営上の理由ではなく、外部評価対策として、何らかの調達・契約改善の取り組みができないかと、支援会社に相談に来るようですが、せっかく取り組みを始めても、本腰が入ることはなく、大きな価格低下の成果はなくとも外形的に共同調達したという結果だけで満足することになりがちとのことです。
  また、入札等の契約プロセスの透明化という取り組みと、契約・調達改善の取り組みが取り違えられた結果、かえって価格が硬直化することもよく起きます。同じような取引額の病院群で、今推奨されている一品ごとの入札等の方式を採用しているものと、事業者間で実質的に大きな競争を起こすように工夫された一団の複数品目ごとに入札する方式を採用しているものを比較すると、後者のほうが割引率は高くなっているそうです。
  要は、何を目的に契約・調達改善に取り組むのかを間違えない~明確にすることが大事ということです。外部に評価されても、契約が透明と言われても、価格が相対的に高いのでは、事業経営としての契約・調達改善は失敗と言わざるを得ないでしょう。

 

2  幹部のリーダーシップの不足
  価格削減を目標に改善を始めても、幹部のリーダーシップの不足で、途中で頓挫する事例もあります。
  ある病院で契約・調達改善の取り組みを進めて、あとは契約という最終段階で、外科系の副院長からクレームが出て、しばらく空転するということがありました。この副院長の行動には、これまで懇意にしていた特定の取引事業者(高額の材料を取り扱う)の依頼があったのだろうと推測されましたが・・「仮に、無理に契約を進めるのであれば、私は、この病院を辞める。」という無理押しの言葉に院長は腰が引けました。

  院長は内科系の医師で、副院長とは出身大学も違いました。もし、副院長が辞めれば、外科系をとりまとめる医師が不在になり、外科系の医師が減って患者確保もままならない・・と心配したのでしょうが、この結果、契約が宙に浮くという結果になりました。
  こうした高額材料に係る事業者と医師との関係は、どのような病院でも契約・調達改善の場では課題になります。この点をクリアするには、幹部の不退転のリーダーシップと、医師との粘り強い話し合いが不可欠なのですが、失敗が生じやすいポイントです。

 

<次回に続く>