実学5:事業目標と改善計画

2016年9月15日

公式・非公式のヒアリング等を通じて事業体の状況を把握し、改善活動の中心となる人材の有無等を確認を経て、一定の仮説の下で作成した行動プランを再検討し確定することになります。

 

行動プランには、例えば、国の定める事業報酬体系から何が有利と考えて部門の行動変容を求めるものから、黒字化のため収入の○%増・費用の○%カットと大枠を示すだけのものまで、いろいろとあると思いますが、どのようなプランが良いかは人によって考えが違うでしょう。

 

私は、いろいろと試してみましたが、現状では、次の手順・方法が、効果的かつ持続的と考えています。
1 現状のままでは、一定期間後に何が起きるかを、現場職員がイメージできるように話す。
2 当該事業体の目指すべき事業目標(サービス目標)を再確認する。
3 事業目標の達成を継続するには、経営数字的な裏打ちが必要であることを明確にする。
4 経営数字を達成するために各部門が実現すべき数値目標と当該数値を実現する選択肢を提案する。
5 各部門での検討を促し、提案した選択肢に拘わらず、数値目標が達成できる部門の改善計画(方法論)を決める。
6 それぞれの部門が目標達成した場合におけるリターンや未達成の場合のペナルティを明示する。
7 改善計画の進捗を月1回はモニタリングし、進まない場合にはその理由を明らかにして、問題解決方法について当該部門と合意する(これを繰り返す)。
8 上記の一連のプロセスを毎年テーマ・水準を見直したうえで動かす(同じことを繰り返さない)。

 

これは手間もかかり、即効性もありませんが、短期的な結果を求めるあまり、「在院患者○○人増」「□□報酬算定△%増」といったわかりやすい目標を明示すると、本来はサービスの改善を進めて実現すべきところ、「退院までの日を長くする」「報酬算定のための手続を機械的にこなす」といった、安直な行動に現場は走りがちで、かえってサービスの質や効率性の低下を招くことになりかねません。こうした質的な低下が一度生じると、その次の改善計画に支障が出ますし、入院中は不満を言いにくい立場の患者・家族でも、退院後には口コミで悪い状況を広めはじめ・・悪い話が地域に広がると、患者の獲得が難しくなるのは当たり前です。

 

また、医療介護従事者は、赤字黒字などの経営数字が前面に出ると否定的な反応をすることも多く、こうした反応を避けるためにも事業目標(サービス目標)という大前提は不可欠です。一方では、これまで続けてきた行動を変えるには、各部門のモチベーションを高めることが必要であり、それは一人ひとりが自分にとってメリットを感じる~例えば部門費用を○%カットできれば□□を購入する~といったものが必要になります。矛盾したことを言っているようですが、現場の行動変容を生じさせるには、事業全体の経営数値ではなく、身近な行動目標をいかに上手く作れるかにかかっていると言えるでしょう。

 

(具体的な改善計画の設定については、次回以降に改めて)