実学14:人事の前に各ポストの役割と責任を明確にしましょう

2018年2月25日

人が2人集まると役割分担ができ、3人集まると派閥抗争が生じるものです。人が集まると1人ではできないことも実現できますが、集団としての決まりごと(分業のルール)が不明確だと混乱状態~烏合の衆になりかねません。

 

大きな病院では1千人以上の職員が、小さな介護施設でも数十人の職員がいますが、いずれも○○長などの役職(ポスト)が決められています。使われている名称は、どこでも同じようなものですが、各病院・施設の事情で、同じような名称でも役割等が違っているのは当然のことです。
しかし、前回紹介した、1つの病棟に2人から4人の看護師長がいる病院の例は極端としても、各ポストの役割や責任が曖昧な事例は結構あります。例えば病院では、以前は、医師の指示で各専門職が動くという医療の原則の下、入院期間も比較的長くゆっくりとした環境だったとともに、職員数もそれほど多くありませんでしたので、組織としての統一性等を強く意識する必要はなかったのでしょう。どちらかと言えば、年長になった職員を給与面で処遇したり、外部から招聘した医師に箔をつけるため、○○長という名称を付していたという面も強く、役割や責任が曖昧でも大して困らなかったのでしょう。

 

現在では、経営環境も以前よりは厳しくなったとともに、入院期間も短くなり、職員数も大幅に増え、行政・患者から求められる要求水準も上がるなど、状況は大きく変わりました。各ポストの役割や責任が曖昧なままでは、事故も起きやすく、労務問題の対応も不十分になり、対外的なトラブルも後手後手に回ることになりかねません。今でも、給与表上では、課長、係長などの区分で給与が決まっている一方で、組織上は、一般職扱いという民間例もありますが、現場では、そうした職員に、どう対応してよいのか困っていると聞くこともあります。

 

一度、病院・施設が為すべき業務全体を役割と責任という形で明確にして、それを各部門・役職で分担するという発想で、各ポストの役割と責任を整理すれば、組織全体としては漏れなく対応できる体制が整うことになります。この10年、行政等からの要請で、種々、為すべき仕事が増えていますが、その都度、対応した結果、組織・役職の整合性がとれていない事業体もあると思われますので、定期的に点検し見直すことが大事でしょう。
また、これが整理できれば、最近では、どこでも実施している職員の評価制度も実質的に意味のあるものになります。役割等が不明確なままでの評価は、どうしても評価する側の好き嫌いになりがちですが、役割等が明確であれば、評価軸もはっきりするからです。

 

昔は「人にあわせて役職を作る」でも困らなかったのでしょうが、今は「役職にあわせて人を育てる」ということです。

何せ、「忙しいから」「責任とれないから」と、役職につきたがらない人が増えてきた時代ですので、事業の継続には避けて通れない課題です。