実学13:人事異動の巧拙で組織のパフォーマンスが変わる

2018年1月25日

私は20年以上、お役所で働いていたため、ポストと人事は別のもの、一定期間で別のポストへ異動するものということは当たり前と思っていましたが、この10年、お役所の当たり前とは違う医療介護業界に驚かされ続けてきました。

 

 

まず、ある民間病院で、1つの病棟に2人から4人の看護師長がいることを知って吃驚。

院長は事務長のせいにしていましたが、その実、院長が自分の味方を増やすために看護師長にすると約束を重ねたため、対応に困った事務長が、看護師長を入れ替えるのではなく、また、役割や業務を定めたポストを作るわけでもなく、単に看護師長という発令をして、業務は一般職と同じ~夜勤もするはずなのですが、看護師長という名称を言い訳に何もしないので、同じ夜勤のシフトに入った一般職が疲弊するという、考えられない状態でした。
しかも、働きの悪い彼らの給与は国立病院の看護部長並み・・当然病院の経営状況は不振でしたので、給与制度の整備に際し、全員辞めてもらう覚悟で、単なる名称付与の廃止・賃金の段階的引下げを断行。院長にクレームが多数行ったようですが、世の中の普通の給与水準であることを確認して納得した人は残留、納得できない人は退職となりました。しかし、退職した人の多くは数年後に再就職・・世の中の普通を知って納得されたのでしょう。

 

別の民間病院では、長期間にわたり病棟間の人事異動をしたことがないと聞き、また吃驚。
異動させようとすると、辞めると言われて・・手も足も出ないとのこと。病棟を見学させてもらうと、同じ病棟の作りなのに、医療材料などの保管場所もばらばら、よく見ると院内統一が常識の種々の記録の様式もばらばらのようでした。その後、院内で虐待などのマイナスの事象が続き、それきっかけに人事異動に着手できたようですが、人事異動が適切になされていれば、虐待などは起きなかったのでしょう。

 

最近、似たような状況なものの結果が異なる2つの事例に出会いました。
一つは、理事長交代を機に、それまでなかった定期人事異動を若手職員から導入して定着。現在は、その異動により、事業所間でばらばらの書式で業務が大変と実感した職員をリーダに、当該書式をまとめて簡素化・業務量削減に着手~1年後の成果が楽しみです。

 

もう一つは、働きの芳しくない介護の責任者の異動を発表したものの、一部のユニットリーダの反対があり、異動を2か月先延ばし、その後、名目にならない名目で異動を取り消して残留になったという事例です。

きっと複数から辞めると言われて・・腰が引けたのでしょうが、こうした対応をすると、何か意に染まないことがあると辞めると脅され、施設の方針を取り下げざるを得ないことを繰り返すようになるものです。この結果、利用者のための施設が、一部の職員にとってのみ「居心地のよい施設」となり、質が低下していくことに・・
なぜ、事後に取り消すような人事異動を安易に発表したのかが最大の問題ですが、当該施設・法人には人事異動案を検討し決める明確な仕組み・手続きがなく、また、人事異動の理由を十分に説明できるまでに考えていなかったことに要因があるのでしょう。
理由が納得できれば、不満があっても理解はするもの・・そこを疎かにする当該施設の将来が心配です。