2017年10月20日
医療介護事業では、その経営原資となる医療介護報酬において、看護師、介護職等の専門職配置の標準が決められています。ただ、医療事業では、どの報酬=配置を採用するかは、事業者に委ねられており、実際の業務量に関係なく「高報酬=高配置」を採用すると、7:1問題のような失敗を招くことになります。
一方、事務管理部門の人員は、専門職と違って、配置標準となるものもなく、事業者の判断に委ねられています。実際には、多くの事業者は、過去の限られた経験則に従って配置を考えているため、人員の過不足など、様々な問題が隠れているものと思われます。
病院で言えば、約210万人の常勤換算の職員数のうち、事務職員は約1割の22万人~1年間で約5千人増えています。この数値には、病院の窓口業務である医事業務や広大な面積を管理する清掃業務や保守管理業務などの外部委託している分は含んでいませんので、こうした業務を含めると、実際の病院業務に従事する事務職員は、統計数値の倍以上はいるのではなかと推測されます。
この事務管理部門(及び業務委託)は、病院事業のためには必須の存在ですが、かといって直接売り上げを生ずるわけでもありませんので、企業の間接部門のように、その水準をどのように設定するかで、病院管理の質と経営結果の数値の双方に影響を与えます。
ある病院グループで、一律に事務職員の数を削減し、外部委託にすると方針を決めたところがあります。
常勤の給与水準より委託業務のほうが安価ですので、一時的に経営数値の改善は図られました。しかし、人事組織として人員が減ったため、ある程度の余裕をもった人事異動が難しくなり、病院管理に必要な技能を取得する機会が減る=中期的な人材確保に支障が生じたとともに、外部委託への適切な関与も弱くなってサービスの質の低下を招いたと聞きます。
また、経営不振に陥った際に、自分の業務に追われて、各部門に積極的にかかわることも難しく=改善行動が事実上できないことが判明したとも聞きました。多すぎるのは問題外だが、「少なければよい」というものでもない・・というのが現実のようです。
そのグループでは、業務フローを見直し・統一しての再来受付や清算業務の省力化によって、必要人員の削減をすることなく、単純に事務職員削減・外部委託の増加をしたことで、課題が顕在化したのではないかと考えます。
面倒ではありますが、一つひとつの業務の内容を点検し、人によらないでできることはないか、少ない人数で行うために何かできることはないか、逆に、専門職が行っている既存の事務業務を事務管理部門に移行できないか(そのための人員増も)と考えて、業務全体の見直しを図ることが、結果として事務管理部門の安定した見直しにつながるといえます。
企業では、サービスフロー、業務フロー自体が重要なノウハウと意識されていますが、医療介護事業では、まだまだ、そのレベルには達していません。
事務管理部門に隠れる問題をみつけ、業務フローの見直しで改善する時代が当たり前になるのはいつのことでしょう。