実学11:医師が多すぎで経営不振になる病院もあります

2017年9月20日

医師が不足していると訴える病院は数多くあります。
病院に勤務する医師数は、現在、常勤換算で22万人弱・・医師確保は自由競争の世界ですから、医師が不足する病院もあれば、医師が過剰な病院も出てきます。
一方、病院の医療費は22兆円を超える規模ですから、医師一人当たりの医業収入は、急性期・慢性期病院を平均して1億円強・・この水準を下回ると経営不振の要因となります。

 

病院の収入は、国が決める診療報酬と患者数で決まるため収入には自ずと限界がある一方で、年俸の高い医師(平均15百万程度)があまりに多いと経営が不振になるのは当然です。

この10年、7対1看護の制度的な失敗で看護師を過大に抱える急性期病院が著しく増えましたが、その一部では、医師数も過剰に増えています。例えば、ある大規模急性期病院では、一時は医師一人当たりで1億3千万ほどの医業収入があったのですが、最近では8千万程度に低下・・医業収入総額は増えているのですが、それを超えて医師を含む人件費が増加し、経営状況は悪化しています。

 

もちろん、度重なる当直などで医師の疲弊が問題視される時代ですので、事業の持続性確保のためには、医師数の増は避けては通れない課題なのですが、問題は増えた医師が平均的に働いているかです。
上記の大規模病院では、確かに医師は増えたのですが、特定の医師に業務が集中して、今話題の時間外勤務が積み重なる一方で、多くの医師は、できるだけ自分の業務を減らす方向に行動するようになっているとのこと。
この結果、医師間の業務の不均衡が拡大し、頑張る医師の不平が高まっていると想像されます。医師の評価制度はあっても、医師の年俸を、働きに応じて大きく差をつけるところは、それほどありません。医師は実質的には個人稼業~請負業という発想が根強く、超過勤務の手当も実績通りには出ない(年俸に超過勤務分も含まれるという発想)病院が多いことも、こうした医師間の不満を増幅します。

 

働き方改革で、医師の超過勤務に焦点が当たっているように思いますが、「超過勤務を払うか」という矮小な議論ではなく、まずは医師の業務が均等に行われているのか、次に総人件費をどの程度の水準にするのか、最後にその人件費の範囲で業務量に応じた年俸・給与制度をどのように作るのかという観点で考えないと、結果的に、医師総体の生産性を下げることになります。
個人的には、医師の固定給を今の2/3程度に設定し、残りの1/3を財源として「働きに応じた加給制度」を設けた上で、超過勤務の支払いを行うのが良いと考えます。もちろん、急激な変化は医師に受け入れられないでしょうから、加給制度の傾斜を当初は小さくし、段階的に傾斜を大きくする手順が必要でしょうが。

 

医師過剰と思われる病院で、実際に、どのように対応していくのかは注目されます。