現場と語る6 京滋摂食・嚥下を考える会のイベント拝見

2015年9月12日

本日、「京滋摂食嚥下を考える会」のイベントに参加しました。

 

この会の存在は、数か月前に、知人の新聞記者から教えてもらったものです。知人が京都への赴任を終えて本社に戻ったことを「肴」に飲み会となったのですが、その場で、京都・滋賀での介護食改善の取組みのレベルの高さや、私の姉の食事の問題などが話題となり、その場で、知人から主催者の一人にメールを送ってもらい・・・その後、何回かのやりとりがあってイベント見学が実現しました。

 

昨日講演を終えて、懇親・宿泊となった和歌山県橋本市から、少々二日酔気味で京都国際会館に向かいます。

国際会館では、日本摂食嚥下リハビリテーション学会が開催されていましたが、その一角で、「京の伝統食器で提供する秋の京会席」というイベントが開催されるのです。
京都国際会館に着くと、明らかに医療職の雰囲気のする人たちが、数多く行き来しています。こうした学術的な学会は、個人的には、あまり好きではありません。どうしても、専門職同士が自分達の関心事項だけを、自分達の視点のみで語る・・自己満足的な雰囲気がすると感じてしまうからです。京滋摂食嚥下を考える会は、どのような雰囲気かと、恐る恐る会場に向かいました・・

 

昼のイベントは、4人の嚥下食を必要とする方とその家族を招き、会席料理~松花堂弁当(写真)を試食するというものでした。料理は、京都の老舗料亭の職人が、食器は、清水焼の職人が、医療の専門職と美味しさと食べやすさ、そして使いやすさについて徹底的に意見交換をして作り上げたもので、特に、食器は、今回初披露とのことです。
医療・介護施設とは異なる、料理・焼物のプロならではの技術と拘りがあるのでしょうが、それを食べる高齢者・障碍者の表情を見るだけで、その良さは一目瞭然です。周囲のご家族も、「よく食べるわ。」「美味しそうに食べるわ。」と声が出ます。きっと、不断の家や施設での食事風景とは全く違うのでしょう。

 

私が見ても、何ら普通の食事と変わらぬ・・それ以上の「見た目の美味しさ」が食欲を高めていますし、食べやすく計算された食材と食器、美味しさを感じさせる味付けなども感じられました。個人的には、このまま、料亭に出しても商品として売れることは間違いと感じた次第です。
家族に嚥下食を必要とする人がいると、なかなか、家族全員で食事に出るのは難しいものですが、もし、こうした商品を提供してもらえる一般の食事処やホテルがあれば、お年寄りならではの「○回忌」など、何かのイベントも開きやすくなります。
そうした想いで、主催者の一人に意見を聞いたところ、「できるだけ早くに、料亭やホテルで出せるようにしたいと考えています。」「こうした分野は、専門職の閉じた世界ではなく、一般の食品サービスの中で、できるようにしたいのです。」といった反応があり、楽しみの多い企画と実感。
ただ、「嚥下食となると、食事中のトラブルを怖れて、前向きにならない料亭・ホテルも多いのも現実です。」とのこと。普及は難しいか・・と考えましたが、イベントにも参加していた知人の新聞記者からは、「協力している料亭さんは、嚥下ネットワークのために専用の調理場を作り、いずれお店で出したいと言っていました。京都ですので、日本料理アカデミーの許可も必要なので、少々時間はかかるかもしれませんが。」との情報をいただき、楽しみが増えました。

 

会場には、福寿園が開発した「おいしい とろみ茶・お茶ゼリー」の作り方もパネル掲載されていましたが、特に、緑茶の作り方のこだわりに驚き・・でも、できそうにはないので、我が一族でもできそうな、ほうじ茶のレシピを撮影しました。知人の情報では、とろみ酒と酒ゼリーも、伏見の造酒屋と開発中(アルコール分の有無は不明)とのこと。さすが、「文化の中心は京都」との想いで見学を終了です。
久しぶりに良いものを見させてもらったという感想です。紹介者の記者さんに感謝です。

 

今回の取り組みは、家庭や医療介護施設で毎日行うことは難しいとは思いますが、一般の料亭・ホテルのメニューとして出せば、十分に商業ベースに乗るでしょうし、その地に住む人にも福音です。全国800弱の市に一か所ずつできれば、きっと地域の生活水準は上がることでしょう。

高齢社会は、医療介護だけが注目されますが、こうした新たなサービスの普及・成長こそが大事なのだと思います