老朽住宅改修 第12回 改修プランを考える(3)~収納空間の確保にこだわる

2025年1月5日

和室が中心の古い木造家屋には収納部分がありません。あっても昔の規格であり、使いづらいものです。
物であふれる姿を再現しないよう、今回は徹底して収納空間の確保に拘ってみました。

 

各部屋の役割が明確にすれば、そこで保管・収納すべき物品が明確になり、自ずと必要な収納空間の確保が具体化し、改修プランにつながります。
今回は、最初に改修後の各部屋の役割を確定し、ほとんどの物品は最初の物品移動で把握できたので、各所の保管収納物品の特定は、想像したほど難しくはありませんでした。例えば、東側のリビング兼客用寝室は、当然寝具の保管が必要となり、それが効率的に収納できる据付家具を置くといった感じです。この寝具用の据付家具については、保管する布団等を既に布団袋に入れていたことが幸いし、その袋を実際に見てもらってから発注でき、無駄のない収納になりました。

 

ただし、収納内の最初の固定棚の高さや、可動棚のピッチ(棚幅)の設定などには無駄に時間を要しました。何を入れるか個別のものが決まっていないと数字の確定はできないのですが、奥方や長女は「出来てから何を入れるか考える」というスタンスでしたので、どこで妥協するか、どこまで拘るかは難しいところでした。出来上がってしまえば、何だったのか・・と思うところもありますが、限られた収納空間の有効利用のためには、一定程度の事前検討は必須ではないかというのが今のところの結論でしょうか。

 

また、和室周囲の収納と奥方用の収納の2点は、結構、考える時間が長かった記憶があります。
和室周囲の収納は、耐震強化の回で触れたように、和室縁側を壁で区切った結果、想定していた収納場所へのアクセスが難しくなりました。しかし、一方では壁で区切られた空間が当初想定の収納空間より広くなったので、アクセス確保の方法次第では、収納力が上がると気づきました。
東側の縁側を区切った空間約1畳分は、ちょうど仏壇が置かれている横でした。仏壇前の既存襖を入口とし、仏壇横の半畳分の空きスペースを通り、その右横の既存壁を撤去することでアクセス確保・・と決めましたが、当初予定の寝具は置けないので、故人の葬式の過去帳や、父親や叔父が趣味で持っていた多数の掛け軸を保管する場所に変わりました。

西側の縁側を区切ったために床の間裏の納戸に入れなくなる点は、縁側の外側に既存の屋根が張り出していたのを活用して、廊下兼サンルームを設置。納戸には当初予定の食器棚他の各種の棚に加えて、壁で区切られ新たに生じた空間に、東側に予定していた寝具収納場所にすることにしました。

 

奥方用の問題は、DKに隣接する有効利用面積6畳程度の空間を、他の人が居ないときは奥方の占有空間として利用し、他の人がいるときはDKの延長線上で活用し、さらに複数の大型収納を利用可能とすることで、趣味も含めた実用性が高い空間にするという欲張りな発想で考えてみました。具体的には、次のような内容ですが、今回の改修計画の中でも、特徴的な場所の一つ(写真)・・奥方によれは、来客のうち女性客は、ほぼ中央部に位置するDKテーブルに座って、キッチンとこの領域を眺めると「落ち着く」という感想の人が多いとのことです。
ア 事務作業ができるよう、長女宅(旧叔父宅)で使っていたテーブル・椅子を配置・再利用し、これらは5人を超える人が集まったときにDKの補助テーブルとして活用する。
イ アのテーブルの背後に扉付きの収納棚(据付)を設置する。上部は、事務用の書庫として、下部は洋服用クローゼットして利用する。
ウ DKから続くフローリング床の窓際の一部を畳(2畳)とし、睡眠場所兼和服の着替え場所として活用する。睡眠時や着替時には、空間を区切るため旧叔父宅で死蔵されていた折りたたみ式の和風衝立を利用する。
エ イの扉付きの収納棚の隣に、布団がそのまま入れられる120㎝幅の収納を据付け、その下部に寝具を保管する。当該収納の上部は、子供用の和服など利用頻度が低い和服を保管する。
オ 利用頻度が高い和服や肌着などは、従来、当該部屋と階段の間にあった南北の狭い通路を閉鎖し、その空間に桐ダンス・洋箪笥等を配置し収納する。この収納は畳側から開けられるようにする。
カ オの開口部は、和室の洋室化で不要となった障子・襖・欄間を再利用する。
キ 畳横の窓はテラス窓にして、外廊下を通って、サンルーム・和室に移動できるようにする。また、外廊下の横に、月1度程度の回収頻度の低いゴミの保管場所を設ける。

 

これらの結果、女性3代の桐ダンス3本は安住の地を得て有効活用できるようになり、また奥方が嫁入り道具として持参したものの陽の目を見ることがなかった鏡台も、和服の着替え時などに活躍を始めました。
また、この6畳程度の空間は、結果的に、DK・洗面・サンルーム・床の間裏納戸(食器等を保管)の結節点となっていることから、奥方の福井での活動パターンからすると、本人の関心事項に関し、何かと見やすい位置・動きやすい位置と感じているのではないかと期待しています。

本当にそうなのか、今のところ確認する度胸はありませんが・・