実学23:会議に向けて2種類の資料を用意してみましょう。

2019年11月8日

方針決定・合意形成を目的とした会議の場合、その場だけで議論して何か決まることは稀です。

参加している人が知っている情報の質も量も異なり、同じ土俵での議論にならないからです。大概は、見当はずれの発言や、細部に拘り過ぎた発言が出て、主催者はまとめられず、「次回に引き続き」となるものです。

 

多くの人が関わる事項を、もし本当に会議で決めるのであれば、最も良い方法は、主催者が事前調整で案を1つに絞り、会議では当該案を示して賛成多数で決めることです。

この賛成多数という結論を得るために提示する資料が、主催者が用意すべき「意思決定の最終資料」です。
人によって流儀は違うのでしょうが、私が、この資料を用意するときは、次の3点に気をつけるようにしています。
ア 決めるべき事項と、当該決めるべき事項の背景・理由が明確に区分されていること。
イ 変えてはいけない条件や、比較検討したデータが簡潔に示されていること。
ウ 案を複数示す必要があるときは、本案・別案として、案が分かれることになった背景・理由が簡潔に示されていること。
これまでの経験から、意思決定は、案自体の良し悪しで決まるのでなく、案を考えた背景・理由や重視した条件の納得性で決まると考えているからです。

 

しかし、その案がいかに納得できるものであっても、これを実際に実行する責任のある部門の内諾を得ていないと、会議で決めても実際は動かないという残念な結果になります。納得できるものであっても、「できないものはできない」からです。
こうした残念な結果にならないためには、事前調整が重要であることは誰でもわかることでしょう。

この事前段階で、実行する責任のある部門を巻き込んで、主催者がやって欲しいと考える結論となるように促すためには仕事の手順が大事です。事実の確認から始まり、改善の方向性の明示、実行する責任のある部門の考えの提示、これを受けた少人数でのミーテングといった手順や、改善の方向が妥当と考えた根拠を示す資料が、主催者が用意すべき「検討の出発資料」です。

 

特に、関係部門が複数、関係者が大勢といった場合には、この「検討の出発資料」の出来不出来で、その後の道筋は大きく変わるというのが私の経験則であり、この作成に一連の労力の8割を振り向けてきた感じです。
また、この「検討の出発資料」は、事実確認が進み、関係者の理解が深まるに応じて、内容・体裁を整えつつ、「意思決定の最終資料」に変わっていきます。既述のア~ウの要素を念頭に、関係者と「すり合わせ」を重ね「合意形成」していく過程と言えます。

 

ここまでやれば、「できないものはできない」という残念な結果になることはないでしょう。
手間がかかるように感じられるかもしれませんが、この過程で、実際に実行する責任のある部門が自分の問題に気づき、主体的に取り組む確率が上がることで、成果を出すには最速というのが私の経験です。
残念ながら、「やれと言って、その通りになった」という経験は一度もありません。