2023年3月15日
試行錯誤~新しい物事に対して、試みと失敗を繰り返しながら解決策を見出していくという意味の四字熟語。必ずしも成功を約束するものではありませんが、様々な可能性を試すことの大事さを表すときに使われます。中国の故事に由来するものではなく、日本で作られた言葉とのことですが、日本の製造業の特徴を示す言葉して用いられてきた「カイゼン」に相通ずるのは面白いものです。
さて、国家公務員 国会答弁作成で長時間労働との記事を、どう思うかと知人に聞かれました。
いくつかの記事を見ましたが、国会からの質問主意書に対する政府答弁書において、内閣人事局が昨年末の臨時国会の国会答弁作業に関して実施した調査結果が示され、それが霞ヶ関から「若手キャリア官僚」が辞めている話等と結び付けられているようでした。
この種の話はHPに掲載したことがある・・と思い出し、過去帳を見ましたが、厚労省若手が行った組織改革の提言の話(行動観察25)に記載していました。
国会答弁などの通常業務の簡素化などは、組織内の工夫・決定で変えられるものと、当時コメントしていましたが、今回の記事は、国会議員からの通告が遅いという点だけが強調されており、違和感があります。某紙のデータでは、当日18時以降の質問通告が6%もあると強調されていましたが、国会からの通告の半数が前日の正午までになされる現状は、20年前の古い経験からは相当改善したな・・というのが正直な感想です。
それより、各省庁の答弁作成平均が7時間という記載に、何でこうなるのかが不思議でした。8時間勤務ですから、答弁作成で、通常勤務時間の9割も要するというのが全く理解できなかったからです。
数年前に現職の人に聞いたところでは、以前は30歳代の課長補佐で判断し決めていたことが、今では政治主導の影響もあって、課長・局長で決めざるを得ないとのこと。決まるまでの手順は増えているのでしょうが、それでも答弁作成平均7時間は理解の外です。
現状の本当の所は、わかりませんが・・長時間の資料作成の発生要因に関する私の次の推測が、まずは意見を聞かれた方への回答です。これらは、見てわかるように、役所内部の「カイゼン」で、直ぐにできることですが、こうした「試行錯誤」がなされているか・・こうした所まで、政府調査や新聞記事が踏み込んでくれれば、私の推測など不要になります。
〇質問通告あってから、どこの部局・課が作るかの割り振りに時間を要している。(昔は、これが好きな人は多かった。今は?)
〇答弁資料案を作成してから決裁受ける手順が簡素化されておらず多段階になっている(多段階作業を止めずに、情報共有アプリ等を活用しても意味は乏しいか?)
〇課長・局長の拘りが強く、大臣答弁の細部の言い回しなど、本筋でない点の修正に時間を要している(答弁者ではない幹部には、方針を電話で言って、資料そのものは見せる必要はないのでは?)
〇事件ものなど、聞かれる可能性が高い事項に関する事前準備が不十分(聞かれてから考えてないか?)
〇何でも総理に聞くという国会状況が、無駄に作成手順を増やしている(各省では終わらず内閣官房まで決裁必要に・・これは結構大変と思います)
また、毎日のように答弁作業が続き疲弊するという点も、否定はしませんが、現状、役所がどんな工夫をしているかは知りたいところです。答弁資料作成が必須の業務なら、少なくとも現有の人数でも疲弊が最低限になるように、次のような労務対応がなされているはずですが、どうなのでしょうか?
〇課内の国会対応を2~3チームに分けて輪番制にして、夜の対応は1チームのみで対応(交替で疲労の蓄積を予防 現状全員が忙しく朝まで対応しているとは思えない)
〇夜の国会対応が常時であれば、全員が同じ出勤・退勤時間であるのは非合理的であり、国会中の勤務時間をフレックスで構成する。(国会中は、対応の専属要員を決めて、昼~深夜と勤務時間を変える)
仮に、今回推測した現状に近いものがあり、国会対応の労務の工夫もないのであれば、本当に国に貢献したいと考える人は、こうした取り組みが普通となっている「役所以外」の場で働くことをお勧めします。国会からの質問通告が早まっても、勤務時間のほとんどを、国会答弁資料の作成で終えるような組織には未来はないでしょう。
手間・手順の圧縮などは、試行錯誤の最初の一歩です。企業のエース級の人に、役所の幹部になってもらい、こうした手順の無駄や工夫の欠如=時間の無駄遣いをバッサリ切ってもらえば、本来、期待されている分野に時間を振り向けられるでしょう。組織内の無駄の排除は、内部の力ではできないからです。
~と、以上は、あくまで私の推測を前提としたものです。
十年一日のごとく、やり方を変えず、人が足りないから・相手が遅いからと言っている・・と記事を認識した私が間違っていて、霞が関で十分な対応・対策がされていることを期待します。