行動観察34:心願成就か社会防衛か

2022年9月15日

「心願成就」~強く願う事で思いが届き、願いが叶えられることを表す四字熟語。日本の仏教文化で生み出された言葉と言われています。

 

さて、長女夫妻が福井に移住して2年を超えました。当時、夫の故郷であるスコットランドへの移住を模索していましたが、新型感染症の流行で、急遽、福井へ。長女は移住とともに転職も検討したようですが、結果的には、留学支援の会社に在籍のまま、福井の自宅が会社の出張所として位置付けられ在宅勤務することに。今では、北陸地域の留学支援の会社として知られた存在になったと聞きます。
ご存じのように、私の生活は、月1回の東京と福井の往復が基本パターンですが、この2年間、福井滞在中に1度は長女と食事~留学という視点から見た日本の課題について教えられてきました。

 

長女は短期と長期の留学を学生時代に経験していますが、我が家は18歳を超えたら「本人の判断を尊重」との方針ですので、長女の2度の留学の際も、どこに行くか等の判断は、本人が一切を行い、親の出番は無し。出番は費用負担のみ~もちろん、合理的な金額と思える内容かは確認しましたが・・・
長女も東京で留学支援の仕事を始めた当初は、自分のこの経験が普通と思っていたようですが、結構な比率で親があれこれ言いだして~経済的に余裕のある家庭の親のほうが多いらしい~本人が留学費用を奨学金や貯金負担するとしても、親の反対で留学断念になることが多いことを目の当たりにして、考えを変えたようです。

 

心願成就~子供が願うことが実現するようにサポートするのが親の役割と思いますが、こうした長女の話を聞くと、親の希望を実現=子供を思う通りにしようと行動する人が、少なくないようで残念です。
ちなみに福井に移住後は、最初に親は出てくるが、一通り理解すると、あとは本人に委ねる場合が東京よりは多い・・北陸の地域性があるとのことでしたが、これは高卒後、県外への進学が多い=子離れの経験があることも、親の考えに影響を与えているのかもしれません。

 

最近は新型感染症で日本を離れて留学する人も激減、数少ない留学生も費用が最近の円安で予定の2~3割増とのことらしく、こうした面に、日本の成長力・将来性が高まらない要因が垣間見えます。
ぜひ、本人の希望にしたがって日本を離れて留学=知見を増やす人が増加するような環境~家庭・社会・政府の支援が良い方向に整っていくように祈るばかりです。個人的には、学卒・就職時に、2人に1人は何らかの留学経験があるような日本になって欲しいところです。

 

また、この2年間の長女のコメントには、外国から戻ってくる日本人留学生に求める厚生労働省の検疫関係の規制に関するものが、数多くありました。わかりやすく言えば、「全く理解できない規制だ」という苦情です。昨年は、帰国前の陰性証明書の様式・記載要領の問題等でしたが、現在は、帰国前のPCR検査の実施自体の無意味さに変わっています。
確かに企業の人事で外国駐在する場合などは、現地の会社の支援が受けられるのでしょう~新型感染症の検疫規制自体は企業関係者を想定して作られていると想像します~が、個人の立場で行く留学・・それも18歳以下の学生の場合に同じことを求めるのは、事実上の留学禁止と言えます。

 

現に、長女のクライアントの中学生が留学を終えて帰国する際に、不幸にして新型感染症陽性と診断され、検疫規制で帰国できなくなり・・航空券はキャンセル・学校の寮等は退所済み。ホテルの手配・費用は本人実施(大使館等の支援も期待できず)。本人から連絡を受けて、長女は滞在先の確保をサポート等したようですが、2週間の滞在等で追加費用は数十万円となったようです。
日本人の子供が自国に帰るのに入国を拒否され(他国では、こうした規制はないというのが長女の見解)、高額負担を強いる結果になったことを、皆さんはどう感じられるでしょうか。会社負担の企業関係者と個人負担の学生留学関係者~こうした観点で規制をきめ細やかに考えないのは、政府の社会防衛の一律の発想が行き過ぎと批判されてもやむを得ないと、個人的には感じました。

 

現在は、ワクチン3回接種の人はPCR検査免除と規制も変わったと聞きましたが、まずは学生の人は帰国させ、早々のワクチン接種を義務付けて免疫力を高めるほうが、現在の国内状況に合致しているようにも思います。業界内では、帰国前のPCR検査は、実施数が減った外国の検査事業者から日本に高額な請求をさせるようなもの・・という意見もあるとのこと。
若者一人ひとりの心願成就の希望を、政府の社会防衛の一律の発想が阻害することのないように、政策・規制担当者には、こうした見方も含めて、常に留学生を支援するという視点を持っていて欲しいところです。

 

なお、私自身が政策担当者だった時代には、この視点は、全く意識していませんでした・・反省