行動観察29:千載一遇か不要不急か

2022年2月15日

「千載一遇」~千年にたった一度きりしかないといわれるほど、めったにないようなすばらしい状態を意味する四字熟語。中国の東晋時代の袁宏が、三国志に登場する優秀な部下・臣下について書いた「三国名臣序賛」に由来すると言われています。

「千載一遇のチャンス」~長らく準備してきたものの、陽の目を見なかったものが、ある状況変化で実現可能性が出る・・多くの努力が報われるようなときに、個人的には使いたくなります。

 

さて、父親が死んだ2020年2月の頃、covid19に起因する「人の移動制限」は、まだ政府から要請されておらず、東京の親戚も福井に来るなど、通常通りに通夜・葬儀が行うことができました。
その直後、今から比べると感染者数や重症者数は少ないにも関わらず、初物のせいか、より慎重な方向に政府判断が働き、「不要不急」をキーワードに外出や移動の自粛を求められるように・・

「不要不急」は、太平洋戦争中に日本軍が使っていた定義のはっきりしない言葉のため、人によって捉える意味が異なることとなり、移動は全て禁止と考えた誰かが、東京ナンバーの車両に石を投げるという事件発生。その車両は地元企業のものというオマケもつきましたが、個人的には、すっかり厭世気分に。
先送りできるものはあるという意味では「不急」というのは理論的にあるのでしょうが、それも半年も先送りすれば、その後は無理~また、「無用之用」という言葉があるように、不要なことは世の中にはないというのが私の感覚ですので、当時、諸外国の状況を見て、「どう考えても2~3年は感染問題続くのに、不要不急の連呼で大丈夫なのか」という気分でした。

 

厭世気分の2020年の春、東京の下町で地域・学校活動に従事していた奥方が、最初の緊急事態宣言による地域・学校行事の激減により時間的余裕が生まれた結果、それまでは私1人での移動が多かった東京と福井との毎月の往復が、常に2人での自車移動と思いがけない状況になりました。自分で銀行に行って金も引き出せない独居の母親の生活確保は、誰に頼めるわけでもなく、毎月必要という判断でしたが、今や口うるさい母親もすっかり奥方を頼りにするばかりです。
ただ、移動車両は東京ナンバー。最初の頃、奥方は、移動途中で石を投げられないかと心配したようですが、何とか無傷を続けています。

 

また、同年の初夏、スコットランドへ本拠を移すことを考えていた長女夫妻は、英国のEU離脱やcovid19流行を見て、断念したと聞こえてきました。

しかし、スコットランド人の夫は、人が多い東京には、「これ以上住めない」とのことで、神前結婚をし、披露宴で親戚一同に喜ばれた福井に「移住したい」という話に・・

数年前に死んだ叔父が住んでいた空き家を有効活用し、短期間での室内整理から大規模改修を経て、8月には東京から福井へ移住。長女は、勤務先の会社が福井に営業出張所を作るという建付けで、住居兼事務所として在宅勤務を開始しました。長女は、心配された地方のハンディキャップもなく、順調にノルマを達しているとのことです。
ただ、数年間空き家だった所に、急にカタカナの苗字の表札が下げられ、スコットランド人が出歩く姿が、一時、近所で評判になったことは間違いないでしょう。

 

「不要不急」が連呼され、息が詰まるような当時の雰囲気の中では、こうした些細なことも「千載一遇」のチャンスを得たと感じたものです。

「母親の相手を奥方にお願いできた」「父親の相続で処理に困る空き家の使い道ができた」と、冷静に考えれば、得をしたのは私なのですが・・当時の「不要不急」の不愉快な言葉の圧力から、大した努力もなく、こうして逃れられたのが、一番だったのかもしれません。