行動観察26:紆余曲折か二転三転か

2019年11月15日

紆余曲折~道や川が曲がりくねっていること。これが転じて、物事が順調に運ばないで、こみいった経過をたどった様子を表す四字熟語です。

結婚式の祝辞で「紆余曲折を経てこの日を迎えた・・」と使われると「何があったのか?」と気になりますし、退職の挨拶で「紆余曲折ありましたが、無事勤め上げることができた」と使われると「何回辞めそうになったのか?」と思ったりします。

 

さて、先月福井で親の相手をしている最中に・・携帯に記憶にない番号から着信。普段は無視するのですが、思わず出てしまうと「元○○新聞の□□です。」と言われ、うっすらと顔を思い出しました。
「11月に研究会があるので、以前、出版された本の内容を話して欲しい。」と言われ、役所当時の恩義もあって断り切れず、引き受けてしまいました。しかし、後日、研究会のメンバー表を見て、大いに後悔・・メンバーの多くは役所時代の同僚達。中には、定期的に飲んでる人も含まれています。

 

「話しにくいな」と思いながらも、「研究会は綺麗ごとの話ばかりだろう」と想像し、この10年間で経験した「医療福祉現場における低レベルの現実」を体系化して、話をするという企画を考えました。
「数十兆円も使って、この程度のサービス・事業が蔓延」という隠れた主題で、資料をまとめ始めましたが、退職後から現在まで、自分の中心的な関心事項が、徐々に変わってきたことを再確認しました。

最初は「事業経営を健全化すれば医療費等の伸びは抑制できる」といった政策担当時代の発想が色濃く残ってましたが、今では、「利用者・地域にとって望まれるサービスと事業経営の持続性確保を両立する」と、目線は利用者サイドに変わり、実際に案件に関わるときは「お役所の定めるルールを守れば、利用者・地域にとってよいサービスと言えるのか」と自問自答しているのが現状です。

どう見ても、国の忙しさのため深く考えずに書いたとしか思えない「通知」が、現場では金科玉条として厳しく指導監査される一方で、サービスの本質である安心安全の確保の具体的方法などは、「通知」に記載されていないので、概ね素通りの感が否めません。こうした点も研究会で元同僚に問うてみました。

 

こうした自分の重点・ゴールが変わっている状況は、本来は、芯がしっかりしていない「二転三転」というべきなのでしょう。もしかすると、今の発想が到達点でなく、今後も自分の考えは変わっていくかもしれません。たった10年を振り返って、これだけ変わっているとなると、これから10年後(生きてる保証はありませんが)、どうなっているか自分でもわかりません。
しかし、私からの問いかけに、昔なじみの研究会メンバーからは「厳しい現実を言ってはいるが、理想は捨てていないロマン主義者」と、いつもの飲み会でのセリフを吐かれて苦笑い・・
別のメンバーからは、「何を考え、何をしてきたかはわかったが、これから何をするのか」と逆に問われて、「まずは末期がんの父親を看送ること。それから何が大事かもう一度考える」と本音もポロリ・・

 

これからも経験を重ねるごとに「二転三転」を繰り返すのでしょうが、最後に「紆余曲折を経たが、面白い人生だった」と言えれば、自己満足であっても最高なのでしょう。

それを目指して、これから10年も、いろいろ試してみたいものです。

 

ちなみに9月に再入院した父親。この間、病院からの説明は二転三転しましたが、紆余曲折を経て、12月に緩和ケア病棟から一時退院となる予定です。

一連の病院と父親・家族のやりとりから感じたことを、利用者・地域の安心度の向上=緩和ケア病棟の運用改善による経営安定の両立の視点からの簡単なレポートにして病院の連携室に提出しました。余計なお世話でしたが、それを入手した病棟担当医からは「無料のコンサル ありがとう」と言われ・・

今後も自由な立場だからこそできることをしたいものです。