行動観察23:一陽来復か捲土重来か

2019年7月15日

一陽来復~冬が終わり、春や新年が来ること。また、悪いことが続いた後で幸運に向かうこと。元々は、「易経」にある語であり、陰の気がきわまって陽の気にかえるという意味から転じた四字熟語です。

 

例年7月は国の役所の定例の幹部人事異動の時期です。
私と同世代の現職の皆さんも、公務員でいられる時期は長くても残り数年。この段階になると、退職、留任、異動といった動きがあっても、あまり動じないのではないかと思います。

良いこともあれば悪いこともある・・一陽来復の心持ちで、淡々と過ごすしかないと達観。もちろん、それぞれの立場で大変な思いはあるでしょうが、残り少ない時間、よい仕事をして欲しいものです。

 

さて、先日、ある飲み屋で、10年以上前に一緒に仕事をした財務省の人に偶然会いました。
双方とも、その飲み屋を「行付け」にしていたので、当時は、よく飲んだものでしたが、その後は会う機会もなく、たまに飲み屋に行って、店のママに彼の活躍の様子を聞くくらいでした。
久しぶりの再会に名刺をもらうと、なぜか外郭団体の幹部の肩書き。これまでの異動経歴と年齢からして、そこに居るような人物ではないはずと不思議がると・・この数年の不祥事に巻き込まれて、責任をとる形で異動~マスコミ的には、いわゆる「左遷」と言われる形だったようです。

 

異動前後は内外から責められ、精神的にも相当参ったとのこと。人事的には、こうした危機的な状態から救済するという意図もあったのでしょうが、個人的には「もったいないことをする」というのが実感でした。ただ、「使える人材」と思ったら何度も同じように使い続ける厚労省とは違って、財務省は、「2度働いたら1度は休める」という人事を行える余裕のある組織ですので、いずれは、しかるべき場所で活躍することになるのでしょうが・・。
酒を飲みながら、優秀な人材と思う彼に対し、「財務省に戻るまでに、何の準備をしているのか」と問うたところ、「将来の消費税の引き上げの道筋をどうするかを研究している」とのこと。それを聞き、思わず「そんな短期的な話は現職が考えればよい。既に処理ができないと言わざるを得ない水準にまで肥大化した国債残高の処理の道筋を考えろ。」と、余計なことを言ってしまいました。

 

幸か不幸かは別にして、目先のことに忙殺される立場を離れることになったのですから、その時にしかできない長期の視点で国の将来を考えて欲しいと思ったためです。彼には、一陽来復の心持で淡々と時を過ごすのではなく、雌伏の期間中に種々の準備をして、次の機会を捉えて新たな一歩を踏み出す・・いわば前向きな捲土重来を期待したということです。
今後、彼がどのように職業人生を送るかはわかりませんが、過去不祥事に巻き込まれた人でも、能力に応じて活躍の場が与えられる人事であって欲しいものです。

 

人間なのですから失敗もあります。意図せず不祥事に巻き込まれることもあるでしょう。

その一度の話を過度に重視する人たちもいますが・・人生一度もつまずかずに、順風満帆に過ごしているような人は、リスクに敏感なことは間違いありませんが、実際に役に立っているかどうかは不明(経験則的には役立たずな場合が多い・・)です。
失敗を乗り越えて、捲土重来を期して前向きに準備する人間が多いほうが、世の中は面白いはずです。