行動観察16:朝三暮四か信頼獲得か

2018年1月25日

朝三暮四~飼っている猿に、朝に三つ暮れに四つトチの実をやると言うと、猿が少ないと怒ったため、朝に四つ暮れに三つやると言ったら、大変喜んだという「荘子」の故事に由来する四字熟語。

うまい言葉や方法で人をだますこと、または、目先の違いに気をとられて、実際は同じであるのに気がつかないという意味です。

 

 

さて、医療介護事業における経営側の対応を見ると驚くことがよくあります。
以下は高齢者施設での勤務体制をどう組むかという取り組みに関する・・最近の事例です。
介護職の採用が難しいのは、どこでも同じでしょうが、その施設では、約1年前に人事労務上の不適切な対応があり、リーダー級の職員が大挙して退職。その噂が口コミで広がり、今では採用したくても、よい人材からの募集はなくなっていました。
このため介護職の働きやすい環境づくりと、施設の悪いイメージを一新することを目的に、一つのユニットで3交代制を試行するということが、本部職員も参加する施設内の会議で決まりました。施設の管理職や、対象のユニットの介護職は準備を進め、あとは実施するだけとなったときに、当該本部職員から2か月後の区の監査が終わるまでは延期とのお達しが・・準備してきた介護職は、その場で泣き出したそうです。

 

区を理由に先送りする姿勢に不信感を持った施設の管理職は、区に直接に聞きに行ったところ、「介護職の負担軽減になるのは良いことです」と喜ばれる一方で、「実施にあたっては、勤務条件の変更ですので、職員に事前に十分説明を」と丁寧に教えられたとのこと。
その区の助言にしたがって、さらに準備を進めましたが、今度は区の監査の1か月前になって、当該本部職員から、「3交代制は実施しない」という一方的な通知が・・管理職等は、当然のように理由説明を求めましたが、一切、説明はなかったとのことです。

 

当該管理職は、こうしたことが繰り返されるのに嫌気がさし、離職を決意・・同調して退職者が出始めたとたんに、今度は、手のひらを返したように、当該本部職員が「やらない訳ではない。3交代の手当など給与制度を見直してから。」と言い出したとのこと。言うまでもなく、何か月も前から話は動いているのですから、「給与制度の見直し」は終わっているはずであり、今の段階で「給与制度の見直し」と言えば言うほど、最初からやる気がなかったことを露呈するだけです。
これで、離職が止められると考える思考回路がわかりません。これまで、こうした朝三暮四の繰り返しで生きてきたのでしょうが、今回は火に油を注ぐことに。どこでも働ける実力のある管理職は、人物・施設・法人を見限り、さっさと次の仕事先を決めました。

当該本部職員は、一見すると穏やかで、誰にでも誠意をもって対応するように見えるのですが、その実、彼が関わると、ほぼ100%離職。人は見かけによらないものです。この施設で人が集まらない・離職が止まらないのは、嘘や偽りがなく、職員から信頼獲得ができる人物がいないためなのでしょう。

 

今回、管理職等が求めたのは、3交代制をやることではなく、3交代制をやらないとした理由説明・・それだけなのです。それがわからず、重ねて信頼を失い、貴重な人材を放出するようでは・・信頼獲得を求める以前かもしれません。