行動観察12:変幻自在か右往左往か

2017年7月20日

変幻自在~自分の思うがままに変化できること。また、変化が素早い様子を意味する四字熟語。

このように生きられたらと常々思いますが、年齢を重ねるにつれて、自分の行いを変えることは難しくなったなと実感するのが現実です。しかし、60歳を超えて、呻吟しながらも、自分自身を変えた元同僚を思い出すと、今更ながら立派なものと思います。

 

創業者に仕えて、法人の成長を背負ってきたものの、後継者に疎まれ、実体のない本部の本部長という閑職に追いやられた頃に、その人と出会いました。確かに法人内外に知り合いは多く、いざとなればトラブル調整などには力量を発揮するのですが、著しく法人の業績が良かった頃から当たり前となっていた高額の交際費の使用は止まりませんでした。ちょうど、法人の業績が著しく悪いと判明(数年来の粉飾決算が露呈)した時でしたので、率先垂範という意味でも、その行動を何とか止める必要があったのですが、法人内では、後継者も含め彼に意見しようとする人はいませんでした。

やむなく、意を決して「今の金の使い方を改めて欲しい。」と直談判に・・法人が置かれている状況なども説明しましたが、予想以上の強い反発があり、最後は「理事長に話をする。」と一方的に席を立たれてしましました。

 

これで今後話はできないな・・と、個人的には暗いムードでしたが、そのうち彼の行動が変わってきました。本来、創業者とともに法人の成長のために頑張ってきた人ですので、元が腐っている訳ではありません。法人の危機を理解して何ができるかと考えたのでしょう。その後、交際費の使用は一切なくなり、法人内の広い人間関係を活かし、ある施設で離職希望と情報のあった職員のヒアリングをして、他の施設への異動を斡旋したりと、収支と並んで大きな課題となっていた人材流出(離職増)の課題解決に向けて中心的な役割を担ってもらえるようになりました。
きっと、長年慣れていた行動を急に変えることは苦しかったと思いますが、「創業者と一緒に支えてきた法人を残すため」という目的を再確認することで、行動変化を実現されたのでしょう。この変化は「自在」とは言い難いものですが、もし彼が仕事を続ければ、法人の改善という目的達成のために変幻自在に行動を変える姿を見ることができたかもしれません。実際には、2年程度で、私が決めた経営層の退職年齢に達し、彼は法人を去りました。法人内では広くは知られませんでしたが、当時の経営改善の成功には、彼の行動変容が大きな要因であったことは間違いありません。

 

後任者にも同じようなことが期待されましたが、残念ながらそうはなりませんでした。

元々、本部長というポストには実体はなく、前任者が人材流出の防止という実績を培ったのですが、後任者は、本部長というのは法人のナンバー2の「偉い人」と勘違いをしたようです。前任者の貢献もあって法人業績が改善してくると、せっかく培った本部長の人材流出防止の仕事も、離職希望者に対して「辞めたい奴は辞めさせればよい」と一方的に止めてしまいました。続いて、給与ルールを事実上無視して本部職員の昇格を進めたり、理事長の近しい人に規定にない手当を出したり・・会議の場でも、事前に部下に言ったことと違う内容にも関わらず理事長に平気で追従を言ったりと、見方によっては変幻自在の行動・・しかし、行動の元となる考えがないのですから、右往左往というほうが正しいのでしょう。

 

後任者は、今でも、特に事業成長に貢献するわけでもなく、前任者の年齢を超えて法人内にとどまっていますが、皆さんは、それぞれの生き方をどう考えるでしょうか。
表に出る行動だけ見れば、変幻自在も右往左往も同じですが、その元となる考えがどうかが、大事のだと思います。