行動観察10:用和為貴か肝胆相照か

2017年4月20日

用和為貴~人と人とは和合して仲よくすることが、最も大切であることを意味する四字熟語。元々は中国の古典にある言葉ですが、日本では、聖徳太子が定めたとされる「十七条憲法」の第一条にあることで広く知られています。ただ、現代では「和を乱す」などと、他者と違う意見を言う人を否定、非難する意味で使われることが多いようです。

 

私は、違う意見・考えを互いにぶつけ合って、その統合を図ることで新しいものが生まれると実感しており、これが本当の意味での和合と考えています。しかし、今の日本社会で、他者と違う意見を言える人は稀であり、そうした行動をとれる人は貴重な存在です。私は、会議の場では、あえて違うことを言うよう促したりしていますが、残念なことに、互いの考えを深めることなく、表面的一致さえすれば良いと考える人が多いのも現実です。

 

もちろん、違う意見をぶつけ合うのも、場所を選ぶことは必要であり、例えば国会の場で、ある事象について、野党が不祥事だと決めつけて政府見解を糺すような場面では、政府側の答弁者としては、意見をぶつけ合うなどは厳禁でしょう。誰でも頭ではわかることですが、実際の場面に立つと、なかなか淡々と対応することは難しいものです。相手の挑発に感情的になったり、思わず強い言葉を発したりすることは、よくあることで、私もそうした場面に出て冷静に対応できる自信は全くありません。

 

私の友人に、本人の意向とは別に、そうしたストレスが溜まりやすい立場にいる人がいます。たまにTVで見ることもありますが、外見から言い回しからも、人柄の良さ、誠実さを漂わせており、なかなかできないことだなと苦笑いするしかありません。まさしく、用和為貴の風情です。飲み会の場で、ある先輩から、「北川には無理だが、彼ならできる。彼しかできないかもしれないな。」と言われたこともありますが、素直に「そうでしょう。私は1週間でギブアップです。」と受け答えしたものです。

 

その彼にも、当然、ストレスはあります。仕事の面はもちろんのこと、今は私と共通の友人のサポートで相当の心労を感じているはずです。詳しいことは書けないのですが、昨年末から、忙しい中で時間を割いて、その知人に会ったり、医療や福祉とのつなぎ役をしたりと、大変な苦労をしています。遠隔地にいて何ら役に立たない私にもメールで報告・相談が来ますが、申し訳ないと思う一方で、彼の誠実さに感心しています。

 

30年近くの付き合いですが、時には仕事で言い合ったり、協力したり・・プライベートでも飲み会で言い合ったり、家族で旅行に行ったりと、本音で安心して付き合える数少ない友人です。その時の彼の顔は、用和為貴の風情とは全く異なり、喜怒哀楽も表情に出ます。こうした関係を肝胆相照の間柄と言うのでしょう。
用和為貴・肝胆相照・・いずれも彼の顔なのでしょうが、彼が用和為貴で疲れたときに、肝胆相照で元気を取り戻す機会となること。これが私の今の役割と自認しています。

 

他者との関係はなかなか難しいものです。

しかし、こうした本音で安心して話せる友人が1人いることで人生は楽しくなるものです。