旅の楽しみ71:海の見える北大東島 海の見えない南大東島(離島訪問)

2017年2月19日

私が職業生活を始めた頃は、市町村数は3千か所を超えていましたが、その後30年を経て、約半数の1,718か所(2016年4月)に減少しています。このお陰もあってか、生きている間に日本の各地をこの目で見ようと、数年前から時間をつくっては、あちこちに足を伸ばしてきた結果、足を踏み入れたことのない市町村も残り10か所となりました。
しかし、残った市町村は、いずれも離島・・それも行くだけで結構な時間のかかる島ばかりで、仮に行こうとしても、昨年10月のように、船の欠航のために断念ということもあります。それでも、何とか年内に、小笠原村以外は足を踏み入れるべく、今月は大東諸島に向かいます。
 
台風の通り道という以外に予備知識なしで那覇にて北大東島行の飛行機に乗り継ぎ・・北大東空港に降り立つと気温は23度。既に初夏の感じに汗だくです。
空港からは、島の中心部の集落へ道を下って向かいます。送迎の人に聞くと、大東諸島は、大洋中に発達する環状の珊瑚礁(環礁)が数回の隆起を経てできたため、周囲は環状丘陵地で、中央部はくぼんで盆地状になっているとのこと。沖縄本島から360kmある孤立した島々が、火山島ではなく隆起した島とは不思議なものです。
予約で一杯のレンタカーではなく、25年ぶりの原動機付自転車で島の見学に出ましたが、天気もよく、周回道路からは美しい海の景色が続きます。石灰石が侵食・風化した独特の沿岸部の地形とあいまって、時間が止まったように感じます。
 
島の中央部では、サトウキビ畑の刈入れ・・これまで他の島で見たより二回りは大きなサトウキビに驚きましたが、10年来の豊作とのこと。今期は、台風の直撃はなく恵みの雨で大きく育った・・この季節に島に働きに来る季節工の人達は休みもなく、悲鳴を上げていると聞き、南の島らしからぬ話に、思わず笑いも出ます。ただ、島のあちこちで道路舗装が行われ、また巨大な漁港整備が進んでいるのを見ると、年間を通じて公共事業が主力産業なのは、他の離島と変わらないなという実感でした。
 
翌日夕刻に、10kmの距離を飛行機で移動し、南大東島に到着です。
日暮れまでの時間、レンタカーで島を一周し、奇麗な海と夕日を見ようと思いましたが・・沿岸に最も近い道を走っても海は一切見えません。見えるのは大きく育ったサトウキビばかりでした。北大東島と違って、南大東島では環状丘陵地の内側に道路があるためのようで、東西南北にある港に出ないと海は見えません。同じ成り立ちの島でも、違うものです。やはり行ってみないとわからないことばかりです。
 
本日は、雨が降ったり止んだりの天気となりましたが、島のガイドブックにしたがって、いろいろと見ることに。今でも島が年間7㎝動いている証拠とされるバリバリ岩、島内部が一望できる日の丸山展望台、白い鍾乳石が鮮やかな星野洞(アップダウンが厳しく途中で息切れ)などを見て回りましたが、一番、記憶に残ったのは、島の中央部にあるカルスト湖沼群でした。
環礁が隆起した地形のため、島の中央部が最も低いために生じた湖沼ですが、宿の人の話によれば表面数mは淡水、その下は塩水とのこと。石灰岩の島のため、きっと地底深くで海と繋がっているのでしょう。沖縄に何度か行きマングローブの景色は見慣れてきましたが、沿海部にない内陸にあるマングローブ林(写真)は不思議なものです。
 
また、大東諸島は高齢化の数値が比較的低いという話も興味深いものでした。宿の人の話によれば、年を取って元気なうちに島を出て、沖縄本島で暮らしている孫の世話をする人も多いとのこと。また、島には入院・入所する施設もないため、こうしたサービスが必要になると島を出て、戻ってこないとも聞きました。
今まで行った島々とは違った印象の話でしたが、これも沖縄語で「フウアガリ」~遙か東の海の彼方にある島というロケーションによるものかもしれません。夜の那覇で、大東諸島で働く若い医師夫婦の活動を伝える番組を見ましたが、明るく話す医師達の姿に、何となく嬉しくなりました。これからも頑張って欲しいものです。
 
明日は、日帰りで粟国島に。
予報では波が高いとのこと・・船が欠航にならないことを祈ります。