淵広魚大~川の淵が広く深ければ、そこに大きな魚が育つという意味から、上司の懐が深く賢ければ、そこに集まる人材も賢明で優秀であることを意味する四字熟語。間もなく新卒者が多くの企業・法人で働き始める季節ですが、良いスタートを切り、賢明で優秀な職員と言われるように頑張られることを願います。
私の次女も、在学中の病気で1年間の休学を経て、今春から某ゲームメーカーで働き始めますが、配属先は希望通りとのこと・・いろいろあるでしょうが、何時、プロとしての仕事ができるようになるか楽しみです。
さて、私は、世間では人材豊富と思われている国の役所を約10年前に辞めて、医療介護業界の実情を垣間見るようになりましたが、この業界には、「わが病院・法人は人材不足だ。」と公言して憚らない人が少なくないことに驚きました。私も役所時代を振り返れば、決して立派な上司の役割を果たしたとは思えませんが、それでも自分の指示の下に働く人たちを「人材不足」などと言ったことはありません。もし、そう言えば、その発言は自ずと広がり、やる気を失わせるだけであることは、誰でもわかることだからです。確かに1人前ではなくても、人の入れ替えができるわけでもありませので、そこにいる人材で「できることを増やす」のが私の役目と思ってきたからです。
転職当時は、誰でもそう考えるのだろうと思っていたのですが、現実には、「〇〇は、仕事ができない」と陰口が好きなものの当該職員のレベル向上には動かない管理職・・「当院の事務職は、できが悪い」と批判して経営不振の理由とする院長・・「当法人は人材不足」と本人たちも出席する理事会の場で自分の役割を忘れて発言する法人本部長・・など、いろいろと不思議なものを目の当たりにしました。
こうした人は、総じて、人を鍛えて働かせるようなことは不得手で、その上司である理事長・院長の「機嫌・評価」を気にすることが多いように感じました。当然、その部下となる人たちも何も考えないわけではありませんので、優秀と思われる人たちは、見切りをつけて辞めていく人も出る一方で、残った人たちも統制のとれた行動はなくなり、個別バラバラに動くといった感じになります。いずれ規律も統制もなくなり、ただ寄り集まっているだけの集団~烏合之衆となり、ある事件・不祥事が起きても隠す方向にモチベーションが働き、その繰り返しの結果、事業全体が不振に陥ることになります。
一方、同じ医療介護事業でも、人材の能力開発に投資を惜しまず、経営層・管理職がきちっと役割を果たしているかを評価する事業体もあります。こうした所では、人材不足という言葉はあまり聞きません。新規採用は苦しんでいるのは他と変わりませんが、それでも人が来ないのは、自分たちの取り組みの問題と考えるからでしょう。
こうした当たり前のことを当たり前に考えるような組織風土になるには、長い時間と息の長い取り組みが必要と思いますが、こうした積み重ねができることが「淵広魚大」と言われる源泉なのかもしれません。