旅の楽しみ68:急遽向かった甑島列島で、予想以上に有意義な時間を過ごす(離島訪問)

2016年10月16日

今回の本来の目的は、小笠原に次いで行くのに時間を要するトカラ列島。中之島まで片道7時間の船旅に躊躇していましたが、行くなら今年しかないと決意・・台風被害も少ないと思われた今10月にチャレンジしましたが、残念ながら金曜夜のトカラ列島行の船便が強い偏西風の影響で欠航に。船会社からは、「月曜日夜に次の便が出ますが・・」との打診もありましたが、さすがに数日を鹿児島で過ごす訳にもいかず、残念ながら鹿児島で無為の金曜の夜を過ごすことになりました。

 

しかし黙って鹿児島を離れるのも癪なので、いずれ機会を見てと思っていた薩摩硫黄島への船便を調べると、これも残念ながら日曜出港・月曜帰港で時間が合わず・・次の候補の甑島列島へのアクセスを調べると、甑島での宿さえ確保できれば、甑島列島の主要3島を回ることはできそうでした。
試しに上甑島の宿に電話すると、シーズンオフもあってか宿の確保に成功。WEB検索で種々調べて、島内での足の確保などの事前準備を終え、土曜の昼には、上甑島へ無事上陸です。串木野から約1時間のフェリーは揺れも少なく・・トカラ列島行の船欠航を疑いたくなるほど・・順調な船旅でした。また、下甑島はドクターコトーのモデルとなった診療所がある島であることを、フェリー内でのWEB検索で知り、俄然、興味が湧きましたが、確かに2日目の下甑島での見聞は面白いものでした。

 

起伏の少ない上甑島から高速船で、本日朝、下甑島に着きましたが、港は人であふれていました。
皆さんが手にした数多くの旗には「アクアスロン」と見慣れない言葉が・・これも検索してみると、アクアスロン~トライアスロンから自転車ロードレースを除いたスポーツで、5月~10月に全国で行われている由。その日は、私の地元の福井の自宅近くでも行われていると知り不思議な縁を感じます。

このイベントのせいか、レンタカーの確保ができずに観光タクシーの利用となりましたが、地元言葉で案内する運転手さんからは、「観光の人も少なくなり、また釣り人も減っている。その上、島のレンタカーが始まってタクシー利用者も急激に減っている。」と、当日の賑わいとは違う話を聞きました。1960年代には3島で2万人を超えていた島も今では5千人強と1/4に減少・・島巡りの途中に、高齢者20名程度の限界集落を通りましたが、以前は人が住んでいた住宅が叢となっている景色を見て、人の減る意味を再認識しました。

 

この集落に限らず、他の集落に行くにも起伏の厳しい狭い山道が続きましたが、そこに住む人が買い物に行くのが大変なことはもちろんのこと、島に2か所の診療所から訪問診療に行くのも大変なことは容易にわかります。道中、「往診の道すがら見ししんきろう」という句碑もありましたが、地元の人は蜃気楼を一度も見たことがないとのこと・・当直や往診で疲れ切った医師が幻覚を見たのではと想像たくましくさせるような厳しい環境であることは間違いありません。来年には島の診療所の管理者の交代もあるやに聞きましたが、時間経過とともに、ますます厳しい医療環境になることは容易に想像ができます。

 

また、甑島列島は、12年前に、当時の4村から1町への合併を選択せず、鹿児島本土の市に吸収合併されるという選択をしていますが、運転手さんから、この合併にまつわる生の話を聞くことができました。「合併によって税金や介護保険料が上がったが、それに見合ったサービス等はない。」「島民は鹿児島に行くことが多いので、高速船は不便な川内港ではなく、鹿児島に近い串木野にして欲しい。」「行政職員の数が以前より少なくなった結果、島でお金を使う人が減った。」「公共事業も以前よりは数が減り、町も火が消えたようだ。」といった話でしたが、合併反対だった立場からの少々偏った見方ではあるのと思うものの、言わんとしているところは理解できました。
島の状況悪化の全てが合併に起因しているとは思えませんが、確かに、これまで行った数多くの島で一つの市町村を構成するところとは、雰囲気も違うように感じます。小さいながらも一つの市町村を構える島と、大きな市町村の一部となった島とでは、島の振興に対する熱意に温度差が生じるのも当然でしょう。また、甑島列島は、昭和初期までは鹿児島よりは天草・長崎との関係が深かったという歴史も、こうした本土と島の関係を難しくしているのかもしれません。
規模の拡大により、自治体経営の安定と効率化を求めた平成の大合併ですが、こうした生の声を聞くと、何が正しいのか、よい決断なのかは、一概に決められないものと実感します。仮に、当時島の4村合併で1町になっていたとしても、それはそれで合併推進の立場の人からは、きっと現状は批判されるのでしょうから・・。

 

こうしたことを考えながら、やっと晴れ間が出て青く映える下甑の港から、アクアスロン関係者で満員の高速船ではなく、串木野行きのフェリーで島を離れました。
無事に行程を終えましたが、こうした予定外の現地対応も悪くないものです。