2016年5月15日
幹部、上司の言うことが急に変わって、嫌な思いをしたり、仕事がやり直しになって大変だったりしたことは、誰しもあるでしょう。しかし、言うことが変わったという現象面が同じでも、その変更の要因、背景によっては、納得できることもあるでしょうし、それを聞いて、より腹が立つこともあるに違いありません。
要は、その変化が、君子豹変なのか、我儘勝手なのかと感じるかによるでしょう。
お役所時代の経験では、事前に、数多くの側面から、無駄と思えるくらいに検討を繰り返し、職制の階層別に意思決定を重ねていきますので、一度、決まったことが簡単にひっくり返ることは多くはありませんでした。それでも、若い頃には、上司から「あの件は、方針を変えたい。」と聞かされることも、偶にはありました。大概はムッとして「何故です」と確認したものですが、ほとんどは、私には見えていない国会や関係団体との状況変化など、直近の動きを反映してのものでした。そうした状況変化を聞けば(本当かどうかは別にして)、方針変更も納得でき、次の作業に気持ちよく移行できたという記憶があります。
しかし、創業者(又はその家族)が理事長=オーナー制という形態がほとんどの民間医療・介護法人では、様相が違っているように感じます。法人としての意思決定が、ほぼオーナーに集中しているためか、オーナーのところで何も決まらない・・一度決まったと思ったことでもオーナーの意向で直ぐに変更されることが多いとよく聞きます。
こうした環境の民間法人で、かつて病院建築に失敗した経験から、別の病院建築を効果的・効率的に進めようと、外部招聘された建築専門職の話が個人的には印象に残ります。この専門職は新築病院を効果的・効率的に建築しようと、トップに協議しつつ仕様書を工夫して設計会社の競争環境を整えましたが、最終段階で、知人である設計者から頼まれたトップの一声で、専門職の努力は水泡に・・。その後暫くして、彼は当該法人を辞め、経営体質から見て割高な病院が竣工したという話ですが、ここまではなくても、トップの判断の度重なる変更で、職員が疲弊しているという状況は聞くことが多いのも現実です。
役所時代は、オーナー制の民間法人は、トップ自らの判断で決めて一直線に進んでいるのだろうと勝手に思っていましたが、現実には、判断材料が乏しく決めきれない・・決めたことも外部の人の意見を聞いて気が変わる・・その変更した理由が職員に理解できない・・そのため職員がトップに何も言わなくなり・・悪循環が拡大するといった状況になりやすいのではないかと思います。
何事も一直線には進まないものですが、その場合には、それに関わる人の納得が大事です。方針変更という同じ現象でも、君子豹変と思われるか、我儘勝手と思われるか。
これによって、その人への信頼度や組織の活動性が変わるのでしょう。