Episode144「公務員にならないため 採用面接で役所はなぜ駄目と問い続けた」

2015年12月28日

父親からの「金返せ」という言葉で、国家公務員試験を最後まで受けることを約束しましたが、小賢しい計算があったことは前回の通りです。

それは、採用されなければ、父親も「やむを得ない」と言うだろと考えたのです。国家公務員になるには、試験の合格だけでなく、国の役所に面接で選んでもらうことが必要ですが、もし、お役所に内定がもらえなければ、やはり民間に行くしかない・・そうなれば返済も不要になるという子供じみた考えが、当時の頭の隅にあったことは間違いありません。

 

採用されないためには、二次試験を受けない、役所の面接を受けないなどの選択肢もありましたが、さすがに、最後まで試験を受けて落ちたというのも自分に負けた感じがしたのでしょうし、面接を受けていないのに採用されなかったというのも、そこまで親を騙すのはできないと思ったのでしょう。全力で試験を受け、各省面接を受けることにしましたが、ただ面接では、役所を批判してみようと考えました。

各省のことを、それほど詳しく知っていたわけではありませんが、20歳も過ぎれば、それなりに行政への疑問・不信などはあるものです。せっかくの機会ですので、それを正直にぶつけてみようと考えたということです。

 

試験の成績は、相当できたとの自分なりの実感もありましたし、大学の成績も出席はともかく結果は悪くなかったので、最初は、いろいろと各省を回ってみるものですが、お金を相手にする大蔵省(当時)だけは選択肢外でした。当時、バブル期の浮かれた世情を見て、「お金のことはやりたくない」と感じていた反映ですが、その後、厚労省では、お金に関する仕事ばかりとなったのは皮肉なものです。

そこで、父親の希望も踏まえ、自治省(当時)から始めましたが、採用されたい側が、採用する側の問題を指摘などするのですから、良い評価が得られるわけもありません。特に、自治省は、地方出向が前提ですので、人柄の良さが必要条件だったのでしょう。早々に、来なくて良いと言われました。本来なら、残念と思うところなのでしょうが、「しめしめ」と思っているのですから、救いようがありません。

 

通産省(当時)では、いろいろと話を聞く機会がありましたが、いかんせん待ち時間が長い・・その間で、農林水産省に行ったら、受付に「親戚に農家はいますか?」との質問用紙を見つけて、「これが採用情報の役所はお断り」と、そのまま退出。隣の厚生省(当時)のビルに辿り着きました。
正直、社会保障など、当時、全く関心はありませんでしたが、それでも新聞等で疑問に思うところはあります。そのまま、各局の先輩たちに対し、ぶつけてみました。「年金制度は、将来の人口変動からみて、どう考えても潰れると思うが、どう変えていくのか。」「医療制度は、医師会の力で動くと言われているが、お役所は、どのような取り組みを進めていくのか。」といった感じです。

 

丁寧に説明をする先輩もいれば、顔を赤くして熱弁をふるう先輩もいて、最初の印象は、本音で話せる役所なのか・・というものでした。他の省庁では、本音を見せずに人当たりの良さだけを出している感じがしましたので、特に厚生省を、そう感じたのかもしれません。
2回ほど面接に行ったところで、厚生省から、呼び出しの電話がありました。その年は、採用期間が短く、各省とも焦って内々定を出し始めており、その一環で、厚生省でも第一段の内々定を出すべく、その対象グループに私が入ったようでした。あれだけ、先輩を試すようなことをして、内々定を出すなど不思議なところだな・・とは思いましたが、父親との経過から、せっかく採用してくれるのを蹴るわけにもいかず、内々定をいただくために厚生省に伺いました。

 

その夜、他省庁からも内々定を出すとの電話がありましたが、厚生省の話をして、丁重にお断りすることに。夏のバイトも忙しく、他に回る時間が惜しかったこともありますが、霞が関の中で、一番印象に残った人たちだと思ったことが大きいのでしょう。
しかし、実際に採用に至る前に、大きな問題が発生しました。