Episode143「民間に行くなら〇〇万円返して欲しいとの条件提示に・・お金に転ぶ」

2015年12月18日

父親に「公務員試験一次試験は合格したと思うが、民間に行きたい。」と電話をしたところ、予想通り、電話での応諾の返事はありませんでした。それでも時間の問題だろうと「高を括って」いましたが、数日後、親が突然上京してきました。

 

父親は、兄2人が高校、大学に行って、いわば花形の国鉄や検察で活躍する姿を横目に、家の都合で学歴のないままに市役所の現業部門に入り、ヒラのままで苦労しているという気持ちが強くありましたので、私に、どうしても公務員になって欲しいと考えていることは、承知していました。きっと「公務員になれ。安定しているし、学歴も役にたつ。」などと、長々と説得するのだろうと予測しましたが、何を言われて民間に行くと言い張るつもりでした。しかし、父親の話は、案に反して簡単でした。

 

「おまえを大学に行かせるのに、学費と生活費で1千万かかっている。」と明細を見せられ、そして、「もし民間に行くのなら、これを返して欲しい。」と続けられました。いわば奨学金免除の交渉のようなものですが、予想外の提示に、「うっ」と返事に詰まりました。親が、子どもに金を返せと言うとは、予想外だったからです。
後から考えれば、頭ごなしに言えば反発することが確実な私に対して、新幹線の移動中に、父親なりに、必死に私へ話す内容を考えたのでしょう。もしかすると、どうしても民間に行きたいと思っている訳でないということを見透かし、私の覚悟を問うつもりだったのかもしれません。

 

意表をつく親の選択肢に対し、準備不足の私は動揺し、思わず「公務員になったら、返済しなくてよいのか。」と問い返して「勝負あり」でした。父親の作戦に見事に落ちて、「国家公務員試験を最後まで受ける。」ことを約束することに。正直、自分の覚悟ができていなくて、お金に転んだことは間違いありませんが、一方では、別の小賢しい計算があったことも事実です。その後の経過は、次回以降としますが、この大学生の時の経験は自分の子供に接する時に生かしています。

 

長女・次女は、高校は公立という我が家の方針に沿って都立高校に進学し、高校卒業後は家を出る、自分の行きたい道を選ぶ、そして、あとで文句を言わないことをルールに、それぞれ、4年制大学を選択せず、専門学校等を選び、自分の道を模索しています。私のように、漫然と大学に入ってから、その後を迷うよりは、目的意識を早く持つ方がよいと考えたからです。自分の置かれた環境を理解し、自分で選択していく・・これが大人になるということと思います。親の仕事は、子どもが大人になるための環境を作ることであり、親の思うままにすることではない・・これが大学時代の実感です。

 

さて、間もなく長男の高校受験ですが、少々、姉とは違う風向きとなりました。高校は私立に行きたいと言い出したからです。基本条件に反する選択ですので、資金源である私の了解を得ることが必要となりましたが、その時、父親の行為を少々アレンジしてみました。
「姉2名は、高校・大学で○○万円かけているので、お前にも同額の資金提供は約束する。その枠内で、この私立高校の学費等だと、その後の選択肢は資金的にA又はBに限られるが、それでよいか。また、私立高校は例外的に認めるので、高校卒業後は、家を出るだけでなく、関東圏以外の学校に行く(日本を知るため)という条件を付すが、それでよいか。」と、実際に金額も見せながら話をしてみると、それまで漠然としていた中3が、お金の条件がきっかけに、ある程度は将来の話を明確に考え始めたように見えました。

 

一応、高校後に目指す大学経済学部も明確にして、今は彼の部屋の壁に貼ってあります。その結果がどうなるかは不明ですが、それでも早めに覚悟を問うことは、子どもが大人になるには大事なことのように思います。
少なくとも、大学最終年に、私のような無様な態度は見たくないものです。