Episode139「1か月の児童相談所研修 自分を振り返る機会に」

2015年11月8日

5月の連休明けの結婚式・披露宴を終えて、国内新婚旅行(山陰~九州)から無事戻り、職場に出勤すると5月も半ばを過ぎていましたが、その時、6月からの研修は、私の希望通り、児童相談所となったことを聞きました。

 

今ではもうないとのことですが、当時は、入省3年目の6月に現場での研修~福祉事務所、保健所、児童相談所のうちの1か所において、1か月間、研修を受けることになっていました。2年間の業務を終えて、ある程度、制度・課題等を知ったうえで、現場で1か月を過ごすことは、その後の仕事に生きるという意味かと考えられます。特に厚生省(当時)は、ほとんど直接執行業務を持たない役所でしたので、その必要性は強かったのでしょう。

3つの施設のうち、どこに行くかは本人の希望が聞かれましたが、児童家庭局に所属していた私は、特に考えることもなく、児童相談所を希望しました。当時、福祉行政の先端組織であった福祉事務所の人気が高かったため、私の希望は、そのまま通りましたし、その行先も、新婚家庭に最も近い相談所とわかり、内心、喜んだものです。

 

さて、6月の研修初日、研修先の児童相談所に1人で出頭して研修開始・・しかし、地元の児童相談所は、初めての研修生の受入のため、何をしてよいのか・させてよいのか、少々、混乱気味でした。相談所業務の概要説明から始まりましたが、そこが何をしているかは、仕事の上で知っていることはもちろん、児童相談所出身の主査(勉強会で一緒)から現場の概況も「耳学問」で聞いていましたので、正直、聞き流す感じだったでしょう。
しかし、定時で研修先を出られるのですから、京都本社から東京支社に転勤し満員電車で通勤する奥方より早く帰る日も多く、当初は、帰宅途上で、ゴルフ練習場に行くなど、私生活では優雅な時間が続きました。
そのまま1か月を過ごすという選択肢もありましたが、人間、暇になると余計なことを考えるものです。2つの併任辞令で、少しは仕事に関心が高まって来た時期でもあったので、研修先に「できるだけ実践の場を見てみたい。」と申し出てしまいました。

 

研修先では、どうするか迷われたようでしたが、結果的には、虐待の恐れがあると連絡のあった家庭や就学前の障碍児を抱える家庭への訪問、一時保護所での当直といった生の体験の他、被験者役としていくつかの心理判定を受けるなどの機会を得ることができました。
家庭訪問や一時保護所での体験は、本当に問題のある人達は、自分では役所には辿り着かないのだな・・との実感となり、自分の仕事は、役所を取り巻く声の大きな人達の意見を聞くだけではなく、本当に困っている人の声にならない意見を考えることと、改めて認識することができました。その意味で、入所後2年間の仕事は、所詮はお役所のデスクワークにとどまっており、どうしても声の大きい人~政治家、反対運動家などの意見に左右されていたなと思い返し、今後を考えるきっかけとなる研修期間となりました。

 

医療介護の現場では、3年目の退職というのが多いようですが、こうした自分を振り返ることができる研修機会があると、少しは、改善されるのではないかと思います。忙しいからと、単に労働力として考えるようでは、人心が離れていくのは避けられないでしょう。お役所もこうした節目研修を大事にしないように思えて、少々、心配なところです。

 

無事研修を終え、定例の7月異動の内示を待つばかりとなりましたが、障碍福祉課長からは、「局外異動の内示はない」と聞かされ驚きました。

市への出向等が背景にあったようですが、私の「5月の連休明けから結婚式・新婚旅行・外部研修と、優雅に2か月を終えて異動する。」という邪な企画は泡と消え、前例のない児童家庭局3年目に突入しました。
邪な企画への「罰当たり」と自らを戒め、保育や障碍の仕事に、1年間、じっくりと携わろうと思ったのは言うまでもありません。