旅の楽しみ55:海鳥と共に 粟島を観光船で一周(離島訪問)

2015年6月20日

今回の離島訪問は、新潟の北端 村上市の岩船港から約35kmに位置する粟島です。

粟島は一島一村で人口は3百人程度の規模。離島の町村のなかでは、東京都の青ヶ島村、御蔵島村、利島村に次いで、人口の少ない島です。

 

数か月前から予定していた粟島訪問ですが、偶然、先週の日経新聞で、「1度は行っておきたい離島」という特集に、今回の粟島が、第5位にランキング。「夏は海水浴や奇岩巡りなど楽しみが多い」「ぜひ食べてほしいのが、わっぱ煮」との紹介記事を見て、楽しみが増えての訪問です。

 

早朝に宿を出て、船の出発1時間前には岩船港に到着です。時間調整にと、宿で用意してもらった軽食を自車の中で食べていると、粟島に渡るらしい様々な装備の人が車の前を通りました。釣道具を肩に掛けている人、シーカヤックを車に積んでいる人のほか、学生と思われる一団も通ります。学生の皆さんは、チケット売場の近くに受付が置かれていた「第8回粟島クリーンアップ作戦」~翌21日に開催される「粟島の海岸をきれいにする清掃イベント」に参加するようでした。

 

こうした数多くの人を乗せた双胴の高速船は、あまり揺れることもなく1時間で粟島に到着。目的を異にする集団ごとに、それぞれの方角に分かれていきましたが、私は、観光船に向かいました。
観光船スタッフである若い女性からチケットを購入する際、「地元の人ですか」と聞いたところ、「島の出身ではありません」との回答でした。新潟からのIターンとのことでしたが、顔と首の日焼けを気にしている初々しい様子には、好感が持てます。これから夏本番、頑張って欲しいものです。
定刻通りに観光船は出発。60人以上の定員表示でしたが、本日の乗船率は1割程度。寂しい感じの船出でしたが、港を出ると、数羽のウミネコが船を追っかけてきて賑やかになりました。晴天の下、涼しい風の中、船の作る白波に沿って飛ぶウミネコ(写真)・・島の南端にまで10分以上、楽しい時間でした。

 

20分ほどで、島の西側の港に到着です。

島には、東側の港周辺と、西側の港周辺の二つしか集落がありません。この二つの集落に、面白い伝承があるとのことです。9世紀初め、北九州の松浦党の一族が東海岸へ上陸、その後、越前国の本保氏一族が東海岸へ上陸して松浦一族を西海岸へ追ったという伝承です。明治期の大火で、粟島の古文書等は焼けてしまい、正確なことはわからないようですが、それでも遠く九州や私の地元福井の先祖が、当該粟島に関係があるのも不思議なものです。

その西側の港を出発すると断崖、岩場が続きますが、各岩場には、釣り人が竿を立てているのが見えます。高速船で一緒だったと思われる人もいましたが、島に到着後1時間もしないうちに、岩場で釣りとは、少々気忙しい感じがします。しかし、皆さん、船に手を振るなど楽しそうに時間を過ごしていました。

 

約1時間、涼しい海風を感じる観光船を終え、次は、近くの店で「わっぱ煮」をいただくことに。中学生らしい女子が注文とりに来ましたが、家業の手伝いのようです。しかし、島に高校はありませんので、間もなく、島を出ることになりますが・・中3の子供を持つ親の一人として、高校で親元を離れるというのは厳しい現実と思います。
食事のあとの腹ごなしと、海岸線を散歩していると、粟島クリーンアップ作戦の一行が食事をしていました。観光船で島一周した際に、海岸線に漂着物が目立っていましたが、これを回収する取り組みは大事と思います。福井でもハングル語、ロシア語、中国語のさまざまな外国製品が流れ着きますが、粟島も同じでしょう。この取り組みを、島の活性化につなげて欲しいものです。

 

また、港では、シーカヤックの一団が、準備を終えて、出発するところでした。島一周は大変でしょうが、透明度の高い海を行くのは気持ち良いことでしょう。夏の粟島は、確かに、「1度は行っておきたい離島」に違いありません。
ただ、村役場に「へき地出張診療所」が併設されているのを見かけましたが、医師はおらず、村上市の病院が週2回、テレビ電話診療を行っているとのこと。冬の時化が酷い時は、船の欠航が1週間も続くようですが、こうした時は、ドクターヘリが飛ぶのもリスクが高いと思われ、今年行った離島の中では、医療面で最も条件の悪い島と思いました。冬の粟島は、夏と違った厳しさを露わにするのでしょう。

 

岩船港に戻る高速船では、屋外のシートに座り、涼しい海風を感じながら居眠りでした。
本日の温泉宿で、潮と汗を流すのが楽しみです。