Episode124 「国や県との仕事に疑問符 リアルさに欠ける」

2015年6月8日

国と地方公共団体とは、同じ公務員でも、仕事の内容・質が異なるのは事実です。一般的には、国が中央~市町村は末端と言われることが多いようですが、大津市での勤務を経て、これは違うな・・と感じました。

 

厚生省から大津市に出向する前に、児童関連施設の利用を止めて、その土地・施設を転用等する際の解釈通知(従来の解釈を実質変更する内容)を出しました。

これは児童関連施設特有のものではなく、全体に共通する考え方の変更に基づくものでした。
大津市に出向してから数か月経った頃、都市計画部門から、「琵琶湖湖岸の整備(写真)のために、既存の児童遊園の利用形態の変更を図ることが必要となり、県の担当部局に協議に行ったらダメと言われた。何とかならないか。」との相談を受けました。

 

どう考えても、それは大津市に来る前に自分で案を書いた通知の対象となるもので、普通に回答すれば「○」となるはずの案件でした。「私から、この内容を県の担当に言いましょうか」と話をすると、「県の面子を潰すことになるので、それはちょっと・・」との由。
通知を出した頃には、こうした事が起きることは想像もしませんでしたし、さらに、間違っている解釈を指摘すると面子が潰れるという意味も、全く理解できませんでした。しかし、そんなことを言っても、問題解決にはつながりませんので、まず、この通知を出した担当課(以前の所属部門)に連絡して、私の解釈が間違っていないことを念のため確認(異動後に解釈が変わっているかもしれないので)し、その後、県と市の状況をそれぞれ説明したうえで、今後の進め方の案を示して、その了解を得ました。
国の担当者も、「そんなことがあるの・・通知を見ればわかると思うが、そうでない人もいるのか」と、私と同じ感想でした。

 

さて、国側の受け皿を整えたうえで、私に相談に来た都市計画部門の人に、次のことを県の担当者に言ってみて・・と話をしました。その内容は、「厚生省の出向者(私のこと)に聞いたら、『条件によっては、違う解釈もあり得るので、○○課の担当○○さんに連絡して確認してもらったら』と言われたので、念のため、確認してください。」と、何とまあ、まどろっこしい話ですが、こうでも言わないと県の面子が立たないようでした。
いろいろあったようですが、結局、県から国に照会がなされ、県から「○」の回答が来て事業が進みだしたとの報告があったのは、確か、相談を受けてから1~2か月後でした。

 

当時、こうした国の本来の発想とは違う県の運用・指導がなされるという事例を、結構、拝見しましたので、県は一体何を考えているのだろうと思った一方で、私も国の一員として、この県と市の実態を知ったうえで対応(明確に通知を書く等)していれば、不毛なやりとりも減ったはずだと反省したものです。県は、国の発想を理解せず、国は、県の行動を予測できずということでしょうが、いずれもが市町村の最前線での活動の足を引っ張っていたことは間違いないでしょう。国も県も、最前線の動きに対し、リアルさが欠けているのだと思いました。

 

それから25年以上を経ましたが、当時と国、県、市の関係はどうなったのでしょうか。

当時に比べると福祉サービスは市町村主体に移行した結果、国は市町村との関係が強くなり、少しは、国にリアルさが出てきているのかもしれません。

しかし、逆に県の存在意義そのものが問われるようになったことは間違いなさそうです。

マスコミに露出する知事が増えましたが、その度に、県は何のためにあるのと考えます。