Episode97 「鄧小平の故郷へ 人口100万以上の都市でも驚くことばかり」

2014年9月8日

次の訪問地広安は、今の中国の発展の基礎となった改革開放を推し進めた鄧小平氏(写真)の故郷です。

大都市重慶に接しており、また、人口100万人を超える規模でしたので、都市のインフラは相当整備されているのでは・・と思っていましたが、予想に反し驚くことが続きました。

 

訪問した病院は300床程度の規模の病院でした。北部では同規模の病院を結構の数、拝見しましたが、それなりに設備も整っており、協力するとしてもイメージが湧きやすいものでしたが、ここでは勝手が異なりました。
まず、驚いたのは、古いタイプの内視鏡はあったのですが、その管理です。感染の可能性もあるので、本来は、一度使用すると滅菌処理等を丁寧にすべきなのですが、簡単に消毒液につけて、直ぐに使っているのを目の当たりにしました。設備はあっても、その安全な使用方法というノウハウの移転が必要なことを感じました。
次に、驚いたのは、組織培養をして検査をする環境でした。結核等の疾患を確定するために培養等が必要ですが、それを担当する職員が結核等に感染しないためには、本来無菌の状態で行わなければなりません。しかし、現実は「木枠にガラスを貼っただけの単なる箱」・・職員への感染リスクは非常に高いのではとの質問をしましたが、その回答は、「わかってはいるが、どうしようもない・・」との由。こうした基本的設備(クリーンベンチ等)の必要性は強く感じました。

 

その他、いろいろありましたが、最後に驚いたのは、病院側として何が欲しいという見解でした。最も欲しいのは電子内視鏡とのこと。理由は、中国沿海部で研修を受けた人が電子内視鏡の使用例を見て、その画像・精度の良さに驚いたということでした。当日、内視鏡の使用実態、感染リスクの高さを見ていたので、高度な機器導入の意味に疑問に思いましたが・・あくまで先方の希望を聴取する目的ですので、特に議論はせずに、念のため南充の時と同じく都市インフラの状況を聞きました。回答内容は、南充と同じく、とても高電圧の医療機器を使えるような状況ではありませんでした。
さて、病院の視察を終えて「招待所」に戻ると、本日、最も驚くことが待っていました。

 

部屋に入ると子供が裸でシャワーを浴びています・・一瞬部屋を間違えたか? と思いましたが、子供は私を見ると、そのまま部屋から走って出ていきました。
どうも招待所の職員の子供が、親からシャワーを浴びるように促されたようですが、思いのほか、私たちが早く帰ってきたので、部屋で対面となったようです。笑うしかない状況でしたが・・さすがに、中国でいろいろな経験はあるものの、自分の部屋で、知らない人がシャワーを浴びている状況に出くわすのは、最初で最後です。

 

その後、雲南省の地方を回り、中国側の好意で用意された川魚の刺身(たぶん肉を切った包丁をそのまま使った・・)を恐る恐る食べたり、アルコール度数60度を超える透明なトウモロコシの蒸留酒(いわばバーボンの原液・・)を痛飲したりと、得難い経験は続きましたが、無事、北京に戻ることができました。

さて、問題はレポートでした。現地の人の気持ちを考えれば、希望を叶えることが優先されるべきかとも思いましたが、現地のインフラを考えると、どうしても別の機器の優先順位が高いと考えざるを得ませんでした。
最終的には、現地で撮影した数多くの写真を添付した数十頁のレポートとなりましたが、これを見たJICA北京事務所の方からは、「次の段階で行うコンサルの調査レポートと同レベル」との言葉をいただくことに。「俄コンサルタント」の誕生でした。

 

今回、今の仕事の原点は、このレポートにあるのかも・・と思った次第です