旅の楽しみ36:新東京百景(多摩地区)を巡る~塩船観音寺

2014年5月2日

今回は、昭島市所在の拝島公園と青梅市所在の塩船観音寺です。

 

拝島公園は樹齢800年の藤が、塩船観音寺はつつじが有名ですが、家族が花を好きなことを踏まえて、ちょうど見頃と考えての訪問です。

私は、昨日、猪苗代湖周辺で咲き誇る桜を見てきたばかりですので、桜・藤・躑躅を同時期に見るという初めての体験になります。

 

さて、拝島の藤は、拝島大日堂(天台宗)、日吉神社の門前に位置しています。根元の周囲は約3m、高さ2.4mの巨木であり、藤棚も約307㎡の広さに拡がっています。

この地域は、武田信玄が北条氏を攻めたときに、本陣を置いたことのある地とのことですが、拝島の藤は、この戦乱も見てきたことになります。

 

近年は、老齢のためか房の数が減少したり、数十センチの短い房が目立ってきたようですが、2006年から、拝島市と、造園集協同組合、地域住民が協力し、土壌を改良、枝を剪定するなどして樹勢を回復させる努力が続けられているとの由。

確かに、木の根元には人が入らないように生垣が設けられ、藤の房も半分程度は本来の長さになり強い香りを放っていましたが、一方では、残りの半分の房は、いかにも生気が乏しいような短さであり、地元で言われているような「千年の藤」に名実ともになれるかは、地元の努力次第と感じたところです。

 

数日前に、亀戸天神の藤を次女と観に行った配偶者は、亀戸とは趣の異なる雰囲気が気に入ったようですが、一方では隣接する薬師堂の雰囲気には違和感を覚えたようです。

門や扉は閉じられ、駐車場と思われる場所も囲われており、いかにも藤を観に来る人が駐車しないようにしている姿勢が感じられます。全体としては、よい雰囲気の地なのですが・・

なぜ、そうなのかは想像の域を出ませんが、地域全体が一致して、地域の宝を守り活かすという姿勢ではなさそうに感じられたのは残念でした。

 

そこから広大な面積の横田基地や高齢者サービスで有名な青梅慶友病院を横目に観ながら、30分ほどで青梅の塩船観音寺(真言宗)に着きました。ここは拝島とは違って、数多くの人で溢れています。

1日から3日まで、本尊の「十一面千手千眼観自在菩薩」の御開帳がなされるなど、つつじ祭り・例大祭の真っ最中だからでしょうか。門前には屋台が並び、お寺のアルバイトらしい女性もチケット販売・清掃などに勤しんでいます。

 

室町時代建立の山門をくぐり、しばらく歩くと早咲きの躑躅が見えてきました。

これも室町時代建立の本堂にお参りして、塩船平和観音立像の足元まで上ると、視界の一面が躑躅です(写真)。昨年行った根津神社のつつじ祭りも立派なものでしたが、規模はそれ以上でしょうか。

パンフレットによると塩船観音寺では、春のつつじに続き、初夏のあじさい、やまゆり、秋の彼岸花、萩の花と、季節の移り変わりの中、四季折々の花々が参詣する人々のこころを和ませてくれるとの由。

当然のことながら、自然に花が咲くわけではありませんので、人を集め、賑わいを作り、そして宗教を広めることを目的に、長年かけて花の名所に育ててきたのでしょう。寺院の努力だけでなく、信者、地域の人が一致協力したの結果と思いますが、こうした姿勢は、これからの地域医療・福祉にも必須のことか・・と考えさせられたところです。

 

また、境内の散策を終えて駐車場に向かう途中で、青梅慶友病院のワゴン車とすれ違いました。呼吸管理をされた車椅子の高齢者に、医師他のスッタッフが付き添っていました。

想像するに、高齢者本人の希望で、身体管理をしながら躑躅の見学に来られたのでしょう。来年も見られるか・・何とも言えませんが、本人のそうした気持ちに寄り添って、利用者本位の行動を行う病院の姿勢が垣間見えたような気がします。病院では珍しいサービスとは思いますが・・どのように終末期を迎えるかを、地域の資源を活かしながら真面目に考えているのでしょう。

 

家族は、「紫陽花の季節などに、また来たい。」と、繰り返すなど、満足いく一日になったようです。

私は、昨日見た猪苗代湖の桜を思い出しながら、日本の多様さを実感するとともに、本日見た花を通じて、地域の力や経営者の意思の大事さを感じる一日となりました。