Episode74 「予定期限を超過 最後に時間管理に失敗」

2014年1月18日

2000年度の改定作業は、本体の点数を決める告示の他、施設基準と呼ばれる告示をはじめとして、告示の体系・構成も見る側の立場から「わかりやすい」という視点で大きく変えました。

 

当時、点数表と呼ばれる市販の出版物がA5版の分厚いもので、それを例示にされながら、関係者から「診療報酬を簡素なものにしろ」と言われていましたので、それに対する回答=分量が減らないのなら、せめてわかりやすくという意味でした。
その結果、告示の作業量は多くなりますが、告示が終わると、それと同等の分量のある通知の作業になります。このためストレス過多となった法令では、種々の事件が起きました。

 

「連絡がつくような体制ですと外出した者に電話したら、携帯が作業部屋で鳴っていた(わざと置いて出たらしい・・)」

「晩飯に行きますとタコ部屋を出たが、登録された店にはいなかった(風俗に行ってストレス解消したらしい・・)」

「子供の学校参観で明日は休みますと言って休暇をとった(そんな行事はなかったらしい・・)」

「ストレス解消と車で外出したが気がついたら青森の高速の出口だった(お金も持たずに出たらしい・・)」

などと、各者各様の「逃避行動」が発生しましたが、それを皆で笑いながら、タコ部屋での作業を継続していました。
私は、適宜、皆の相談を受けながら、最終的に、3日間で医科、歯科、調剤と全ての通知を見て修正するという日程をたてました。それが日程の最終期限だったからです。

 

告示との対応関係がわからないので、通知にも告示と同じコード番号(例えばA001などと)をつけるといった通知形式から始まり、告示の内容と対応しているか、通知で示すべき基準等が明確か・・といった実質的なことはもちろん、誤字脱字がないかという形式的なことも含めて、全般を見ることにしました。ここまで来れば・・という気持ちです。

医科からはじまり、歯科を終えた段階で、既に、連続70時間を超えていました。流石に体が言うことをきかなくなったので、調剤の通知案を持って自宅に戻りましたが、寝ているのか寝ていないのかわからないような睡眠障害の状態になり、半日して少し状態が戻ったので、調剤のチェックをして修正点を電話連絡し・・・何とか間に合った!と、ホッとしました。

 

しばらくして、法令係長から、「実は・・」と、深刻な顔で相談を受けました。

一連の告示・通知の作業は、内容を決めるものでしたが、これとは別に、医療機関が診療報酬を請求する際の手続き、注意事項を決めている「記載要領」という通知が手つかずということが判明しました。

日程的には4月1日からの施行には間に合わないことは確定的であり、なぜ、手つかずになったのか・・と理由を今聞いても意味はありません。その時の問題は、実際に作業をする医療関係者に、どのように対応を依頼するかという対応策を決めることでした。
4月の診療分の請求は、実際には5月上旬に行われますので、最悪、その請求が適正に行われるように対応すれば、問題は最小限にとどめられます。

 

いつまでに何を出す、4月の請求の特例措置を講ずるといった方針を決めて、医療課長に相談しました。いつもは落ち着いた対応の尾嵜課長も、その時は、流石にムッとした顔で、「なぜ、そういうことになったのか」「どういう対応にするのか」「医療関係者は知っているのか」ということを聞かれました。
終わったと思った途端に、終わっていないと知らされるのは辛いものです。特に、この問題処理の前面に立つのは、私や係長ではなく、課長ですので、その思いは強かったことでしょう。経過については「自分の管理ミスです」という話だけをして、今後の策として、「○○しかない」と説明し、「これを医療団体に説明して欲しい。それで納得してもらえれば、早急に作業を進めます。」とお願いをしました。

 

その後、課長には嫌な思いをして関係者の理解を得ていただいたのだと思いますが、何とか、4月中には記載要領を出し終え、最悪の事態は避けられました。その時のことを思い出すと課長の対応に感謝するばかりですが、自分にとっては、その後の進行管理業務を担う際の良き教訓になっています。

 

この記載要領を含めた、点数表と呼ばれる市販の出版物も、従来のA5版からB5版になり、かなり薄くなって無事出されました。

しかし、私の希望であった(A4版で)半分以下にするというのは達成できずに残念でした。