Episode71 「常に目と耳と頭を動かす 全体把握がすべてのカギ」

2013年12月18日

当時、審議会委員への事前説明や審議会自体は、課長・室長等の仕事であり、私の仕事は、それに向けた準備を完成させることと割り切ったことは既に記しましたが、それでも、その仕事を効果的・効率的に進めるには、課長・室長等が誰かと会って話をした情報を入手することが不可欠でした。

 

そのため、暇があれば、外から戻ってきた窓際の室長等の前を歩いては、取材をすることは怠りませんでした。特に、当時の尾嵜医療課長からの情報は大事なものでした。

幸いないことに、私の座る席は、医療課長が外部の方と面談するソファーを背にする場所にあり、注意すれば、何の話をしているか、何が問題となっているかを聞くことができました。

 

逆に、課長は、私が聞いていることを当然と考えていたようであり、話の途中で、私を呼んで、話の流れを知っているという前提で、今の制度の状況の確認や私の見解を聞くことも度々ありました。そうすると、私としては、課長のところに来た外部の方の役職を確認しつつ、必要だなと思えば、別の仕事をしながらも、ウサギのように・・耳だけは後ろを向いているようなことが繰り返されました。
気を抜いてボーとしている時に、課長に呼ばれて困ったことも時にはありましたが、何となく話をつなげて、会話の中で何が問題かを探るような技も身に着けることができました。

 

さて、12月中旬は、改定率が決まる時期ですが、1999年の12月も改定率を政治過程で決める真っ最中でした。政治過程での調整役は、安倍議員(今の総理)他でした。関係団体が与党の予算調整作業の拠点だったホテルに呼ばれ、順次、与党がヒアリングを行い、意見交換をするという手順が進められましたが、企画課長と医療課長が二人セットでホテルに張り付き、そこでの模様と指示が、医療課長から私に連絡が入る体制が自ずと出来上がりました。連絡を受けた私は、関係者への情報伝達、作業の指示等を行い、課長が戻ってくると、資料の打ち合わせをするということが連日繰り返されました。

 

この時に、耳だけは後を向いている「修練」が役に立ちました。時間もない中で、詳細の指示はないのですが、前後の情報や他の室長等からの情報を得て、課長の期待に大きくは反しない資料の用意をできたのではないかと思います(本当のところは、課長に聞かないとわかりませんが・・)。ある意味、消耗戦ですので、作業部隊に、いかに無駄な仕事をさせないかが・・求められる場面でしたが、役所に居続けて常に目と耳と頭を動かし、情報を集めて全体把握をなんとかできたことで、凌ぎ切ることができたのだと思います。

 

当時、医療課では、「医療課関係者以外立ち入り禁止」の張り紙をして、人の出入りを制限していましたが、医薬品・医療機器産業の窓口担当課の課長補佐は、常時、私の席の近くに座っていました。数年後輩でしたので、「関係者以外は入ってはいけないと書いてあるだろう。情報が欲しければ企画課に行け。」と苛めると、しぶとい彼は、「私も医療課関係者です。情報は医療課のほうが早くて正確ですので、ここに居ます。」とすましたものでした。担当課の静止も聞かず、薬価改定に関するビラを国会議員会館に巻いた業界関係者もいましたが、医療課に陣取っていた彼を通じて事なきを得るというハプニングもありました。今では笑い話ですが、当時は、ビラを巻いた張本人を「出入り禁止にしろ」と叫んでいました。

改定率が決まった日、最終的には橋本前総理の「薄皮一枚」という判断で、診療報酬改定と薬価等改定の合計=ネットで0.1%の改定率になったという興味深い話も聞きました(真相は不明ですが)が、それよりも、私の役所滞在が連続7日を超え、まず情報よりも、珍しく風呂に入りたいと思ったことを覚えています。

 

今でも、別のことをしながら、相手の話を正確に聞くことができますが(見ようによっては不真面目な態度でしょうが)、自分の仕事を効率的に行うには必要なスキルになっているのは、ありがたいことです。

当時の「修練」に感謝です。