Episode64 「未来のあり方を視点の違う人たちで考えるのは楽しいこと」

2013年10月8日

これから年末年始は、2年に1度の診療報酬改定作業が本格化することになりますが、この時期になると、保険局医療課時代は、「よく働いたな」と思い出します。

 

医療課は、現在約40兆円の規模となった医療費の配分を決めるセクションです。医療課に異動した当時(1998年)は、医療費は約30兆円の規模。組織としては、尾嵜医療課長を筆頭に、4人の管理職(室長1、企画官1、管理官2)、数多くの課長補佐、係長・主査と、計30人強(医療指導監査室を除く)の規模でした。医師、歯科医師、薬剤師、看護師、事務で構成され、事務も法令、社会保険、旧医務、公的病院からの出向者と多様な構成でした。

 

これだけ信条や背景が違う人が集まると、職種別に縦割りの雰囲気が強くなり、同じ日本語を用いているはずなのですが、双方の意思疎通ができないという状況になりがちです。

通常であれば、1年目は基本的な議論を行い、2年目に本格的な議論になるというのが、診療報酬改定の検討ペースなので、こうした意思疎通の問題も、時間が解決してくれ、2年目には何とかなるものです。

しかし、この時は、前年に、当時の与党がまとめた「21 世紀の国民医療(与党医療保険制度改革協議会)」という方針に基づき、就任直後から、医療保険福祉審議会制度企画部会で、検討・議論をしなければならない状況でした。特に、医療課では、薬剤給付のあり方、診療報酬体系のあり方という二本立ての検討する必要があり、実務的な案を作るため、制度企画部会とは別に二つの検討チームを設け(これとは別にペースメーカー等の機能別分類の検討というチームもありました)、月に数回の検討会というペースで議論を始めることとなりました。中身の前に検討の形を作ったということです。

 

しかし、最初は、自分自身、何をやっているのか、さっぱりわかりませんでした。そもそも、「今の薬価はどうやって決めているのか?」「今の診療報酬体系の特徴は何か?」という素朴な質問にすら回答できないのですから、検討もなにもありません。
そこで深夜に、同世代の課長補佐に、素朴な疑問をぶつけては、自分の知識を増やしていくとともに、昼間の検討チームの準備会議では、該当する部門だけではなく、極力全員が参加して打ち合わせをするようにしました。他の部門で行った話を、別の部門に話をするのでは、時間が惜しい~面倒くさいと思ったからです。
しかし、これが功を奏しました。職種別の縦割りの雰囲気が強い組織が、徐々に、隣が何をしているかを理解し始め、自分の領域の話になった際に議論となる事項を予測し自発的に準備を始めてくれるようになりました。
こうなると他職種で構成される組織は力を発揮します。縦割りの弊害はなくなり、視点の違う者同士の議論が面白い案を作り出すようになりました。課長補佐同士の年齢が近いことも、仲間意識を高めたのでしょう。

 

2000年の薬価改定、診療報酬改定に対する評価はいろいろとあるでしょうが、私自身は、過去の制度から離れて、今の制度の土台を作った改定と思っています。この背景には、こうした他職種による真剣な深夜から未明の意見交換があったのです。後日、医療課で複数回の改定を経験した省令職の方から、「今回の改定は面白かった。これまでは他が何をしているかわからなかったが、今回は全体がよく見えて良かった。」という言葉をいただきましたが、非常に嬉しかったことを覚えています。

 

今では、当時の課長や省令職は全員退職され、当時の課長補佐の多くは現職の課長(何人かは退職しましたが)ですが、時々、当時のメンバーで同窓会を開いています。

その際には、今の立場を離れて、当時の関係に戻るのは不思議なものです。個人的には、高校時代の生徒会の同窓会に似た雰囲気と思っていますが、熱い思いで一時期を一緒に過ごした者が感じる想いなのかもしれません。当時、30歳代後半でしたが、知的好奇心を擽るような最も楽しい時間を過ごせたと、今、思います。
今回の改定を担う方にも、10年後に、こうした想いを抱いていただけることを願うものです。