2013年7月8日
今回からは、30歳代の課長補佐時代のエピソードです。
課長補佐として、4つのポストを経験しました。最後は、大臣官房国際課の課長補佐です。
当時、国際課は、旧厚生省と旧労働省が統合され大きな組織になっており、課長補佐級は10名以上いたと記憶していますが、その中でも、政策調整委員と言われる各局調整や他省庁調整を担う筆頭の課長補佐でした。しかし、同じ大臣官房の総務課、人事課、会計課、厚生科学課、国際課の中でも、例年は国際課は問題の少ない組織のはずなのですが、私が在任した1年は、いろいろと問題が生じた年でした。
外国勤務の経験があるとはいえ、過去、中国経験者で国際課の筆頭補佐になった例は聞いたことありませんでしたので、なぜ私を、ここに置いたのか謎でしたが・・その理由を自覚するときが来ました。それは、WHO(世界保健機関)やILO(国際労働機関)の分担金に関する予算要求のときです。
厚生労働省は、その業務から、WHO(写真)やILOに深くかかわっており、各機関に加盟する国が負担する分担金については、厚生労働省が予算を確保し支払っていました。過去、大きな問題は生じなかったのですが、その年は、大きな変化がありました。
まず、国の予算編成が、義務的経費と裁量的経費に区分され、分担金は裁量的経費に区分されました。裁量的経費は、省全体で一定率のカットが求められましたが、分担金は国際的に決まっており、省の都合で削るわけにはいきませんし、他の部局の予算を分担金のために深堀りすることもできません。予算要求が極めて難しい状況に追い込まれました。
また、分担金の予算は外貨建てで要求するのですが、悪いことに、当時は円安が急激に進んでおり、外貨建てで同額の予算を確保するのに、1~2割増しの円の予算が必要となり、さらに要求が厳しくなっていました。
当時は、同期が会計課の補佐をしていましたが、いろいろと事前調整しても、会計課自体に金があるわけでもなく、他局も自分のことに手いっぱいで国際課のために協力してくれるわけもなく、全く埒があきませんでした。
そこで、やむを得ず、同期に「滞納で要求するか?」と打診したところ、外国経験のある彼も、「他国は滞納が普通だ・・」と同調してきて、ついに年末の調整を前提に、裁量的経費の一定割合カット相当分を滞納する要求を会計課に出しました。「分担金を裁量的経費として一律カットの対象とする」という今回の概算要求の仕組みが悪いという主張するという建前での決断でした。
これで概算要求は終了と、親族関係の法事もあったので、地元福井に帰省していたところ、会計課の同期から電話です。何かと思い「何をしろというのか?」と聞いたところ、いつもの彼らしからぬ歯切れの悪い話が続き、結局は、会計課で国際課の予算枠の確保にミスをして金が足りないということがわかりました。他で調整できないので、当方に連絡してきたのは見え見えでしたが、一くさり文句を言ってから、結局は円安分も滞納という、3割近い大幅な滞納要求=筋の通らない横車(為替リスクは各省で負うべきものというのが当時の常識)を押すことになってしまいしました。
もちろん、国際課長、国際担当総括審議官に電話で直接説明して了解を受けましたが、省としての都合はわかるものの、9月以降の調整を考えると重い気分での決断でした。
概算要求の最初の段階で、省を代表して、事務次官が主計局に説明をしたとき、分担金の滞納について触れました。すると、主計局次長からは、「そんな不謹慎な要求は受け取れない」と一喝されたと、同期から話を聞き、これから始まる調整が、さらに嫌になったことを覚えています。
さすがに、自分でも、為替変動分まで滞納するというのは、やり過ぎと思っていましたので・・
(次回に続く)