Episode47 「何事もやりすぎはいけません 特に部下との関係は」

2013年4月18日

タコ部屋の主であるとともに、私は、新たに報酬体系を作る責任者でもありました。
かつて診療報酬改定を経験し、障碍部で医療観察法の新たな報酬を作った経験と、さらに入所施設の報酬を昼と夜(日中活動と夜の体制)とに分けるという新機軸という面白さもあり、自ら引き受けました。
ただ、支援費制度は失敗した訳ですから、前例にはなりませんので、一から、新しいものを作ろうと考えていました。
チームとしては、左腕の医系技官を別にして、5名の事務職からなるチームです。しかし、報酬改定の経験者は一人もいませんでしたので、当初は、「言葉」も通じず、四苦八苦していました。かえって、措置費時代の経験が邪魔をしていたのです。

 

ある日、チームに出していた課題について報告を受けたのですが、1人が何もしていないということが発覚しました。彼は、他の4人とは、派遣元が違った局におり、チームの中でも、意思疎通があまりなく浮いた存在に見えていました。そこで、良い機会と考え、チーム全体を怒鳴りつけました。
「何をやっている。決められた期限に何も出せないとはどういうことだ。」と一人に言い、「お前らは、他が何をやっているのかも知らないのか。それで仕事が終わると思うのか」と・・当然、皆が、問題を認識し、チームの力が高まると期待したのですが、取りまとめ役の補佐が、期待に反して・・
「何で黙っているんだ。何でできなかったのか、説明をきちんとしろ・・」と、問題の一人に対し、私に説明を促しました。それを聞いて、私は頭に血が上り・・

長時間にわたり、彼らを叱責して、自分でも落ちがつけられなくなり、「これから5人がチームで仕事をする連帯責任を果たすため、連判状を書け。捺印もして、壁に貼っておけ。」と最後は言うことに。

前時代的な方法とは思いながらも・・

 

その後、チームの結束は高まり、仕事も軌道に乗っていたのですが、ある日、ある事情があり、人事当局の厚生担当管理職のところで話をしていた際、最後に、「作業部屋で、あまりやりすぎて、問題起こすな。」と言われました。
何のことかわからないので、タコ部屋に戻り、チームの何人かを呼んで話を聞いたところ、厚生労働省の労働組合の一人がタコ部屋に来て、壁に貼ってあった「連判状」を見つけ、人事当局に「前時代的な手法」として通報し、チームの一人ひとりが人事当局に呼ばれて事情を聴かれたとのことでした。思わず、「だったら、『パワハラです。』と言ってくれれば、俺は異動できたのに・・」と、当時、既に仕事が苦しくなっていた私は、半ば本音で、彼らに伝えました。
すると、「悪かったのは、我々です。企画官に何の問題もありません。事情も知らずに駆け込む組合の奴が悪いのです」との由。改めて、彼らの連帯感が高まったことを喜ぶとともに、彼らに嫌な思いをさせた自分の行動を、申し訳ないと思ったものです。

 

一方では、既に医療観察法の室長の人事異動問題で、全く信頼しなくなっていた人事当局の管理職には、「別に、個別に職員を呼んで聞かなくても、私に直接聞けば、ご指摘の通りと回答するのに、私のことを全く信じていないのだな」と、さらに嫌気が増しました・・
目的が正しくても、手法を選ぶのは慎重に。少なくとも部下を守るため。それが教訓です。