Episode46 「ギリギリの場面をしのぐ 思考の切り替えと反射能力」

2013年4月8日

障碍者自立支援法案を国会提出後、タコ部屋(意味は、前回のコラムに)が設けられました。

 

障碍保健福祉部のほか、社会局、雇用均等児童家庭局から派遣されたスタッフ、松嶋障碍福祉課長(当時)のお力で厚生労働省に出向してもらった都道府県からの出向職員10名程度、すべて男性のむさ苦しい混成部隊です。

1年後輩の企画官を右腕に、医系技官(今は松江で精神保健指定医を目指しています)を左腕に、私が、タコ部屋の主となり、それぞれ役割分担を決め、複数のチーム構成で仕事の始まりです。
 

 

障碍者自立支援法は、介護保険に似た制度ですが、財政規模は小さいものの、制度体系としては、介護保険より範囲も広く、前例のない独自の枠組みを持っていました。そのため、判断し決めなければならないことが、時間のない中で山積していました。
まずは、各チームを対象に新制度の枠組みの説明から始まり、作業チームごとに仕事の到達点のイメージを伝え、そのために必要な基礎数値は何か、困ったときに判断する際のポイントは何か等々を伝えるところからです。自分の頭の中にあることを、各者に伝えるということです。

 

その後は、各チームの検討・作業結果を個別に話を聞いては、意見交換・指示判断をしていたのですが、どうも各チームの連携が悪く、同じことを別のチームに繰り返して話すことが多く、自分も疲れてきました。また、午前から、「昨日の○○は、どうなった」と聞くことも頻繁で、各チームも緊張の連続で、疲れてきたように見えました。
そこで、右腕、左腕の二人と相談して、時間の無駄を省き、効率的に皆に働いてもらうため、週1回、全員参加の会議を開催することに。そこで皆さんに選択肢を提示しました。
「週1回の会議は月曜と金曜とどちらが良いか」「午前と午後とどちらが良いか」「私は、普段からタコ部屋に午前からいたほうが良いか。場合によっては来なくても良いが。」と・・
 

回答は、「会議は金曜午後に」「私は午後からタコ部屋に」というものでした。理由は、
「月曜だと、土日に仕事をせざるを得ない可能性もあり、また会議後1週間働くのは辛い・・」
「午前は、明らかに、私の機嫌が悪く、辛い思いをする。少しでも辛いのは少ないほうが・・」
「私がいないと問題発生のときに困るが、朝からいると、『どう?』といつ聞かれるのか考えるのが辛い。指示のあったその日か、翌日の午前か、仕事をする時間の選択肢が欲しい・・」
と、概ね予想通りでしたが、彼らなりに「生存本能」が働いているのは、面白く、また、頼もしく思ったものです。
 

さて、週1回の会議が始まりましたが、私にとっては、予想以上に厳しいものでした。
相手は20人、1週間かけてき準備してきた山のような課題を次々に説明し、私が判断するのですが、私の判断が止まっては時間も無駄になり作業も進みません。私の思考の「切り替え」と「反射能力」が問われることになりました。
できが良いものばかりとは限りませんから、不機嫌にもなり・・ある時は、「お前らが1週間かけて準備したものを、10分聞いて30秒で判断させるのは不公平だ」と弱音を吐きましたが、後日聞くと、その会議は、タコ部屋内では「御前会議」と呼ばれ、皆、緊張していたとの由。
 

ならば、もう少し、優しくしてもよかったかと・・今は、思います。
ただ、当時は、他の件も抱えており、個人的には、あれが限界か というのも実感です。