2013年2月28日
Episode39で記したとおり、障碍者に係る新制度は、部内で、財政問題への対応に限定、サービス改革(規制緩和)も同時実施との路線対立がありましたが、議論の結果、両方に手をつける大掛かりな改正となったので、どうせなら行政改革もと考えました。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」という諺がありますが、「三兎を追う者」はどうなるかという実験です。
当時の障碍部の内部管理の面では、データ整理・活用ができていないという初歩的な問題のほか、予算構造が悪く、同じ課の中でも、ある部門では予算が余っているが、予算の不足する他の部門へ充当できないという、極めて硬直的な体制が問題でした。
国の予算は、階層構造になっており、上位から款・項・目といった構成になっていますが、目のレベルでは、事業の性質が近いと判断され、予算の過不足の調整は可能なものの、それ以上のレベルでは、原則、過不足の調整は禁止されています。通常は、制度別=制度を所管する組織別に階層化されますから、変なことは起きませんが、障碍部は、3つの局から課を集めてきた「寄合所帯」でしたから、組織上は一つに見えても、予算構造上は、従来の局の時の構造をそのままにしていたため、同じ課でも予算が款・項レベルで違っていて過不足調整ができないという、ばかげた形でした。
支援費制度が法律の大失敗であれば、支援費制度下で予算構造を旧態依然としたままで放置したのは予算の大失敗です。法律制度と予算構造がマッチしていないと、まともな運用ができないのは当然ですが、前体制では、その点も何ら顧みていませんでした。
制度改正の経験は何度もありましたが、さすがに、予算構造の改正は経験がありませんので、どうしたものかと考えていましたが、考えてもわからないので、本丸の財務省に「どうしたら良いですか?」と素直に聞きに行きました。
すると、主計局の予算補佐の方が、「せっかく法律改正で新しく制度が一本化するのだから、予算構造も大きく見直しましょう。」と意気に感じてくれて、予想に反して、予算構造を変えることが順調に決まっていきました。
後できくと、大きく予算構造を変えることは稀で、説明等にも手間もかかり、できればやりたくないと思う人のほうが多いとのこと。たまたま、大きく変えることを厭わない、大事と考える人に、当たったのだなと思うと、不思議なものと思いました。
さて、当時三兎を追ってみた結果を、現時点で自己評価すれば、次のようなところでしょうか。
「財政基盤は失敗」
利用者負担が事実上のゼロもそうですが、国庫負担化に乗じて第1回報酬改定のような財政面を事実上無視した対応が出るようでは、補助金のままが良かったと後悔気味。いわば、お金の大事さを知らない子供に、多額の資金を渡したような感覚です。
「事業者改革は不発」
既存事業者は過度の経過措置等で効率性は上がらず、新規参入組が増えたことが救い。福井で、現実の世界で、その事業者改革を実践して、何とか将来の道筋を作りたいと努力中。
「行政改革は成功」
予算構造の改革は昔問題があったことも知らないくらいに定着。データについては整理・公表レベルがもう一つ。
それでも地味な行政改革が成功したのは、私の救いです。
なお、データの整理・公表のレベル向上は、役所時代の同期に期待しているところです。