2013年1月28日
支援費制度の後継制度については、二つの選択肢がありました。
障碍者保健医療福祉改革ビジョンをまとめる前段階で、その考え方について、部内で議論となりました。
当時話題となっていた介護保険統合か、それとも公費による新制度創設かではありません。
ちょうどその頃、介護保険との統合について絨毯部屋(お役所のトップクラスのいるフロアを指す業界用語)で次官級主催の会議がありました。
個人的には、今回は無理と判断していたので、正直、「無駄な会議だな・・・」とうんざりしていたのですが、そこで、会議主催者から、驚くような一言がありました。
「私は、障碍制度が介護保険と統合されるよう、毎日、神棚に祈っている・・」
こうした省幹部の「神に祈るような」意向とは別に、障碍部としては、現実認識から、介護保険統合ではなく、公費による新制度という選択は、事実上、共通認識となっていました。
二つの選択肢とは、その新制度に関しての選択肢です。
一つの選択は、財政問題への対応であり、また、施行準備などの時間制約も強いことから、サービス改革は最小限にして、財政面に特化した改正とするという現実対応路線であり、その中心は、私をはじめとする担当課でした。
もう一つは、財政面だけではなく、サービス面での改革も同時に進め、概ね10年程度で、制度として完成したものにしていこうという前向き路線であり、その中心は企画課でした。
数次にわたり議論を積み重ね、結果としては、企画課の判断に従い、サービス面も財政面も完全に新たな枠組みを設けることで決着しました。
これを前提に、4つの検討会の成果を踏まえて、障碍者保健医療改革福祉ビジョンを書きはじめ、原案は、概ね1週間で書き上げました。
サービス面では、サービスマネジメントの制度化、3障害別のサービス体系の一元化、入所施設の夜と昼の給付の分離、施設設備要件の徹底した規制緩和などであり、財政面では、在宅サービスの国庫負担化、マクロでの国庫負担基準、訓練等給付と介護給付の2分化、利用者1割負担です。
特に、財政面では、将来、介護保険との関係を議論できるように、そのベースが同じとなるように整理しました。
事後、ある人から、「教科書どおりの青臭い仕組みを作るから、長続きしないのだ。」と批評されましたが、その時点では、完全に介護保険との関係を捨てられるような環境ではないとの条件下にあっただけのことです。
それから、概ね1年後、障碍者自立支援法が現実のものとなりました。
皆さんもご存じのように、新法施行後数年で、事業者団体の反対活動で、利用者負担は定率から応能負担(事実上のゼロ負担)になりましたが、先に成立した障碍者自立支援法を廃止し別の法律名とする見直しでも、サービス面での体系は、概ね、そのまま維持されることになりました。
こうしてみると、明らかに、現実路線だけでは長続きせず、前向き路線が主張したものが制度として残っています。
ちなみに、福井での会社による障碍者就労支援の現時点での成功も、規制緩和を徹底利用してのものなのは面白いものです。仮に、1割負担があっても、経営面では影響は受けない自信もありますが。