Episode33 「仕事を託す相手をどう育むか これが一番難しい」

2012年11月28日

財務省との調整と並行して進めていたのが、自分が、医療観察法関係の業務から抜けても大丈夫な体制をどう作るかです。

次の仕事が待っていたからです。

 

医療観察法の施行で最も問題だったのは、新病棟を実際に建設することでした。
病棟内容を一つ決めるにも、病院担当課の営繕部門との不毛な軋轢がありました(これがNHOでの営繕改革につながるのですが・・)が、最大のポイントは、地元の自治体・住民に説明することによって示される不信・不安にどう応えるかでした。

 

一つひとつの予定地について、丁寧な手順を踏んでいくとすると、現在の体制・陣容では、うまくいくとは思えませんでした。

そこで、管理職を含めて数名を投入したいと考え、私を障碍部に送り込んだ幹部の一人に相談に行ったところ、「○○さんと話をするほうが早い」との指示を受け、その人のセットで、絨毯部屋(お役所の大幹部のいる場所の通称)の一人と夕食を食べながら、その必要性を説明することに。
これまで、どんなに厳しい仕事でも、そこにいる「現有勢力」だけで行うことを主義としていたので、個人的には、非常に嫌な時間でしたが、「仕事の体制を整えるのが今の仕事」と、何とか自分を納得させ、無事、その勤めを果たしました。
 

新年度から、数名の人員が、国立病院部から派遣されてきましたが、問題は、いかに短期間で、その仕事のプロになってもらうかでした。
実は、この医療観察法病棟建設の仕事は、彼らが過去やってきた病院統合等とは全く異なり、その経験・自信が、かえって邪魔になる=円滑に技術移転が進まないと考えていたので、まずは、過去の経験が無駄と気づいてもらうよう、内部の業務で「痛い」目にあってもらうことに・・・
現場説明で必要となる「入院・外来の運営ガイドライン(案)」の作成を10日程度の期限で依頼し、進んでいないことは承知しながらも、期限当日まで何も言わずに・・その夕刻に一言。「できた?」 
当然できていないので、翌日の会議に間に合うよう、作成途中の資料をもらって、深夜に入院を当方が作成し、それを元に、無理に待ってもらっていた若手補佐に、朝までに外来分を作ってもらうという「芸」をお見せすることに。
その時の話は、たまに、彼らにお会いしたときにも話題になるように、相当、インパクトがあったようで、その後は、技術移転も円滑に進みました。

 

私が、彼らを同伴して、目の前で、議会説明・地元住民説明などを直接行い(写真は一緒に住民説明に行った花巻病院)、どういう雰囲気になるのか、何が問題になるのかを実感してもらうことも複数回行いました。
財務省の主査からは、「あなたが直接やるのですか?」と吃驚されましたが、願って来てもらった彼らに、失敗させるわけにはいかす、まず、自分がやって見せるという判断でした。
概ね、大丈夫と判断した段階で、独り立ちを促し、私は、次の業務に移行することに。

 

実は、住民説明は、私も不安でしたが、それを自分で行った経験が、NHOでの部長業務や今の仕事に役立ったと実感しています。
育てるつもりが、育てられたのかもしれません。一緒に成長するという発想が大事なのでしょう。