Episode30 「人が集中してできることは一つ だから時間管理が重要です」

2012年10月28日

複数の人の訴えを同時に聞き分ける こんなことを普通にできるのは、厩戸豊聡耳皇子(うまやどのとよさとみみのみこ)という呼び名もある聖徳太子(写真)くらいでしょう。

しかし、集団組織に属していると、一度に複数のことをしろと 無茶なことを言われることもあります。誰もが聖徳太子ではありませんので、同時にできる訳もなく、しかし、一方では、できないと言って組織内で軽んじられるのも癪なものです。

 

お役所の最後は厚生労働省障害保健福祉部でしたが、異動する際に、ある幹部からは、「破たんした支援費を何とかしろ」と言われ、また、別の幹部からは、「精神障害に関する3検討会をまとめて問題解決の道筋をつけろ」と、全く別のことを言われました。

旧日本陸軍時代に、大本営から来る複数の指示により、前線部隊が混乱したことを思い出し、「これは危ない・・」と思いつつ、実際に異動すると、二人の幹部の言っていたこととは全く違う状況であることを確認することに。
現場で聞くと最大の問題は、成立したばかりで、1年以内に施行することが決まっている心身喪失者等医療観察法の施行業務でした。法律は成立したが、その施行に向けた準備は全く何もできていない・・法律成立をした責任者達は、全員異動した・・と制度創設としては、まず、あり得ない状態でした。こうした危機的状態を知らずに私に指示をした二人の幹部のことは、「危ない人達だな」と、思ったものです。

 

さて、指示のあった2点、支援費の状況、精神障害の3検討会設置の背景などを確認し、医療観察法の施行を含めた3つの仕事は、いずれも2年程度で行う一人前の仕事とは思いましたが、処理しなければならないことは間違いないので、「支援費制度の破綻処理は、最終的に1年半後の予算編成・制度改正等で対応」「精神3検討会は、1年後にまとめて、支援費破綻処理と同時に対応」「医療観察法は、今後、最優先で内容を固めて施行準備を進める体制づくりを整える」と自分なりに、優先順位と中期の段取りを考えて動き出しました。
特に、支援費・精神関係は、判断できるデータすらないという状態でしたので、半年かけて、その収集・分析を行うこととし、その作業を見守りながら、その間は、エネルギーのほとんどを医療観察法の施行業務に集中させることに。

 

概ね1年半後、モチベーションを下げる大幹部との会議を経ながらも、何とか3つの仕事の波を重複させずに、障碍者自立支援法案の予算編成まで辿りつくことに。
そこまでは、何とか心身状態も持ったのですが・・・

障碍者の新法案の提出後、動いていたはずの医療観察法の施行業務が停滞し、部幹部の意向で、障碍者新法の施行準備と医療観察法施行業務の両方の面倒を見る=仕事の波が重なることに・・・そこで オーバーヒート。

周囲は、そうした状態であることも知らずに、私の留任工作を人事課としていることが判明し、さすがに我慢の限界を超えて人事課長に「準辞表」を提出。

そのまま辞めようかと思いましたが、縁あって、国立病院機構に行くことになりました。

 

その異動時に、「厚生の人は、皆、あんなに働くものかと思っていましたが、違うのね。」と、労働系の企画課長(当時)から感想を言われ、「それはないでしょうね」と苦笑いするのが精一杯だったことを憶えています。

この痛い経験が、仕事のピークを調整し、個人に多大な負荷をかけないといった 今の工夫に つながっています。