2012年10月18日
私自身、「先輩を先輩とも思わない」と言われ続けた役所人生でしたので、それほど、上司、先輩をたててきた訳ではありませんが、それでも、この人は、立派な人だな、信頼できる人だなと思った人は結構います。
それらの人に共通することを考えると、「俯瞰的にものを見ることができる人」「ものごとを動かす際の条件が明確にできる人」そして、「実行段階で判断がぶれない人」の3点です。
企画官時代に、これを実感したのは2人です。
障碍サービスの次の制度を内部で考える仕事をしているときですが、どうしても制約条件が多く考えが堂々巡りをすることや、逆に、深く(狭く)考え過ぎて、その結論が一方的な理由に基づくものとなることが、よくありました。
もちろん、自分自身でも、そうならないよう努力はするのですが、一人では限界があります。そうした場合には、当時の企画課長のところに行っては、自分の考えを一通り説明し、どう感じるか、どう思うかと聞いていました。
自分で「弱いな」という部分は的確に指摘され、どうしてそう思うかと聞くと、自分が考えていた切り口とは違う「視点」から理由を言ってもらえました。
後で考えれば、「当たり前=役所の当たり前ではなく世間の当たり前」のことでしたが、私にとっては、思考をまとめる上で、極めて重要なものでした。
「自分の考えを俯瞰的に見てもらえる」=世間とのズレを調整してもらえるのは、非常にありがたかったことを覚えています。
もう一つは、心神喪失者等医療観察法の施行準備のときです。
この法律は、入院医療の実施主体が国公立に限定されているという特殊なもので、法律の担当課と、入院医療を実施する医療機関の担当課が違っていました。私が、法担当課に異動したときは、両課の関係は最悪でした。
理由は、明らかに法担当課側にあると私は見ていましたが、謝っても済む話ではなく、どうにかして協議を始める端緒を探していました。
そこで、相手部局の企画課長のところに、夕刻以降、ぶらっと行って、「本件について病院担当課との協議を動かすために必要な条件は何か」と直接聞くことに。
もちろん先方の立場もあるので、良い話が聞けるとは思いませんでしたが、「感情的なしこりがある点を除けば、○○と○○をクリアにすれば、担当課の心配は緩むだろう」と動かすために必要な条件を示してもらえました。
これをクリアするのは当方の役割ですから、財務省とも調整し、その上で、病院担当課に申し入れを・・・。企画課長も事前に口を聞いてもらったようで、ぎこちない形ながらも、両課の協議が動き出すことになりました。動けば、後は何とかなるものです。
「全体を見て動かすための条件」を明快に示してもらえたのは、当時の私は、表に出さないまでも感謝しきりでした。
信頼する上司に共通する3事項を、私自身が、これからクリアすることができるかどうかは不明ですが、まずは、これを意識し続けることです。