Episode21 「無体な横やりもよくある 大事なのは冷静な対応」

2012年7月28日

急速に国立病院機構の経営改善が進んだのは、政治を含めた外部環境を整理し、内部管理を徹底して改善し、経営層をはじめとするスタッフの皆さんの意識改革が進んだことが最大の要因です。
しかし、国立病院機構も国の機関である以上、政治的な動きに無縁な訳ではありません。私が退職した後に、政治的な関与が著しく高まっています。例えば別の公的病院グループと合併しろと言われる一方で、各病院を個別に売却しろと言われるなど、方向性が全く逆の指示が国の別の部門から出るような時代です。こうした調整に労力と時間を費やし、内部管理を高める余力はなさそうに見えるのは残念なことです(矢崎理事長が目指したような脱独立行政法人化・脱公務員化が実現し、こうした状態から抜け出れば、さらに成果を出せる可能性は高いと思います)。

 

さて、私が現職の時代にも、病院の医療密度を上げる=短期間で患者の退院を促すため人員配置を高めるという医療政策の方向とは全く逆方向の、総人件費を5%カットという独法規制に、河村副理事長(当時)や吉田企画経営部長(当時)が頭を悩ましていました。
その意味では、私自身、政治的な動きからは距離を置いて、経営的なアプローチに専念できたのは幸せだったのだと思います。しかし、財務部長の役職から、どうしても避けえなかったのは、工事入札や土地売却に係る政治家秘書さんからの問い合わせの対応でした。

 

国の機関という立場もあって、工事は政府調達の公共入札ルールに基づき行われますので、早めに行われる公告後に事業者が病院等に問い合わせれば良いだけなのですが、なぜか、○○病院が設計をしているという情報を得ると、事業者は政治家を通じて問い合わせてくるということが多数ありました。これは、与野党を問わずにです・・・
基本的には担当課長に議員会館に行ってもらっての対応でしたが、私も、どうしても本部に来ると言ってこられた秘書の方と数回お会いしました。全員、地元事業者の方を同伴で、「予定価格はどの程度」等と、吃驚するようなことを聞かれるので、最近の実例(入札結果は公表されるので回答可能)を紹介しつつ、最後は、「本部のルールで、外部の方との面談は必ず記録に残し上司に報告することになっています。」とお答えすると、「今回の訪問はなかったことにして欲しい・・・」旨の相手の一言で終了しました。さすがに、今は、こうしたことはないのでしょうが、直営から独立行政法人になったばかりの頃は、政治側の皆さんの意識が変わっていなかったのでしょう。

 

また、当時、政治家との関係で最も印象深いのは、滋賀県(写真は滋賀の名産 信楽焼)に所在する病院用地の売却に関することです。20歳代の頃、滋賀県大津市に出向していたこともあり、私自身、それなりに滋賀県には思い入れがあります。
この滋賀県で選出された政治家ご本人から、財務部に連絡があり、電話を受けた担当課長に、「地元で都市計画道路の整備があるが、病院が売り惜しんでいるから工事が進まない。けしからん。直ぐに売れ。」と一方的に話をされ、「ぐずぐず言わずに直ぐ現地に来い」と呼びつけられました。それを横で聞きながら、「直ぐに言ったほうが良い。私か課長が行くかは別にして」と課長に伝え、電話は一旦切れました。
 

さて、現地の状況を病院や所在市町村、国土交通省の出張所に聞くと、「用地買収の予算も計上されておらず病院が土地を売りたくても売れない状態」との由。行く必要はないものの、後々のこともあるので、申し訳ないと思いながらも課長に行ってもらいました。その模様を聴くと、最初は大変だったようですが、事前確認の効果もあり、最後は、「わざわざ来てもらって申し訳ない」となったとのことでした。その後も、問題は生じませんでした。

 

本件は、難しい政治との関係解決に向けた担当課長の冷静な対応に感謝しきりでした。