2012年6月18日
私の子供をはじめとする家族への接し方に関し、配偶者からは、「あなたの『まずは、やらせてみる』という方法は、最初はどうかと思ったけれど、効果的ね」と言われています。
この方法論は、私の経験に基づくものです。
過去、「失敗するに違いない」と思い、良かれと考えて、あれこれ言っても、相手は、「なぜ反対するのか」等のネガティブな反応を持たれるばかりでした。
私が、これら過去の仕事の経験から理解したことは、言われて分かるような人は、言われなくても気づいているということであり、逆に言えば、自分で考えて気づかない人は、やってみないと分からない人なのだということです。
このことは、財務部長として就任して最初に担当した第1回目のCT・MRIの共同入札(写真)の際にも実感しました。この共同入札は、やるということと第1回会議の日取りだけは私の前任者が決めていましたが、どのような方法論でやるかは全く決まっていませんでした。悪いことに、第1回の会議参加者は、共同入札をする目的について院長等から何も聞いておらず、国立病院機構のできたばかりの投資ルールの考え方(自分で買う=自己責任)に慣れていないこともあり、何でも買ってもらえると錯覚しているようでした。
特に、特定の身体部位を見ることができるオプションコイルが多種類あるMRIでの混乱がひどく、あれも欲しい、これも欲しいと言い続け、最後には、今回の医療機器投資枠を超えるような病院も出てきました。「投資枠を超えるようなものは買えません」と繰り返し言う自分の様は、「おもちゃの前で駄々をこねる子供」を説得する親のようで、情けなかったものです。
その後も、何回かの会議を経ましたが、思ったようには進まないので、第1回目で大きな成果を出すことを諦めて、拙著「データで分かる病院経営の実学」に記載したように、いくつかの作戦をたてました。一つは、全体の額はともかく、コイルを多数買った病院の負担額が高くなるように入札条件を工夫したことであり、もう一つは、コイルの使用状況を1年後に調査し全体に公表したことです。
高く買って、そして何も使わないという実態を知れば、来年からは、こんな馬鹿げたことはなくなるはずという考えです。その仮説のもとに、病院の希望のまま、「やらせてみた」ということです。結果は、拙著を見ていただければと思いますが、効果てきめんでした(今でも続く共同入札は、病院の意志・行動をうまく把握できず、形式的なものになっているように見えるのは残念です。お役所仕事になったということでしょうか・・・)。
また、これは私の失敗でもあるのですが、共同入札後に、実際にMRI等を導入する際に、各病院は、それを設置すべき環境整備(空間改修・電気設備等)の準備が遅れに遅れており、医療機器は安くなったものの、導入は1か月ほど予定より遅れました。
その代表例が、3か月ほど工事で導入が遅れた高崎病院(現高崎総合医療センター)でした。年1回の国病学会の一つのセッションで共同入札が議題とされ、私も発表者として参加しましたが、始まる1時間前に、その高崎病院の発表資料を見て、自分の発表資料を直前に大きく変えました。
病院の発表は、「工事の遅れは本部が原因」という内容だったのです。これは良い機会と考え、各病院の事例を含めて工事が遅れた理由を整理して、高崎の場合には、病院が選んだ設置場所が、大規模改修が必須な特殊な例と解説しました。
会議後、放射線技師の方から、「遅れた理由がよくわかりました。」と言われ、「次からは同じことを繰り返さないようにしましょう」と話題も深まりました。
翌年は、会議の混乱も、工事の遅れもなくなりました。
失敗に学ぶことは多いものです。