2012年6月8日
国立病院機構の建築コストが下がると、その効果は大きく、経営水準が低い病院でも建替等の可能性が出てきます。理屈で言えば、2名の過剰な人員を減らすと、年間1千万円となり20年で2億円の金額となりますが、国立病院機構では、概ねこの金額で、1病棟(50~60床程度)を建設できる単価水準となっています。いわば、数千万単位の費用の効率化でも、大型投資が可能となったということです。
そうなると数多くの病院が建替えをしたいと言ってくるようになりました。しかしその計画内容は、医者を増やす、病院が新しくなると患者が増えるなどの、従来失敗したパターン(予定数字は作れるが実現はしない。)と同じであり、私の目からは、「これではね・・・」というものばかりでした。
老朽化した施設ばかりの国立病院機構では、 建設投資は、経営改善意識を支える重要なファクターでしたので、厳しく計画の悪さを指摘して直ぐにあきらめられるのも経営改善の目からは残念な一方で、国直営時代の陳情予算確保といったように甘く捉えられるのも問題というジレンマを、当時の私は感じていました。どのように病院のモチベーションを高めつつ、実効性のある投資プランを作るかということです。
そこで当時、私に会いたいという病院との連絡役をしてもらっていた中嶋整備課長(当時)に相談し、次のような取り扱いで行こうと決めました。
私が厳しく対応した病院には、事後的に、中嶋さんから病院にアドバイス(事前に私と打ち合わせていた内容も含む)をしてもらい、逆に、中嶋さんが最初の応対で厳しくした病院には、私が具体的な提案をするという形です。
漫才で言えば、それぞれが別の役割を演じるということです。漫才と違うのは、病院によって私と中嶋さんの役割を交換する点です。そうは言っても、私が厳しく言うほうが、圧倒的に多かったと記憶しています。その意味で、中嶋さんからは、「私は良い人に見えています。ありがとうございます。」と変な感謝のされ方をされていました。
こういう風に役割を分担すると、一度相談に来た病院は、不思議なことに、一部を除き、あきらめることなく、良い計画づくりまで頑張ってくれました。厳しさと優しさがあると、人は育ちやすいということのようです。
本部内では、企画経営部長と財務部長との間でも、対病院長の応対として、私は意識的に分けていました。例えば、企画経営部長に厳しくやられて、「怒っている」ように見えた南和歌山医療センター(写真)の院長を呼び止め、「何があったの?」と聞いて、「○○したらいいのでは?」とか「財務部で○○の枠組みを作ったらやりますか?」などの意見交換をし、実際に大型医療機器に係る特別投資ルールを作ったところ、厳しい条件を当該病院がクリアして設備投資に至り、その後の病院の意欲改善のきっかけとなりました。
また、後半には、事前に、当時の吉田企画経営部長に「私は、○○病院に××と厳しく言いますので、その後、そちらに行くはずですからよろしく」と相談した上で、対応したことも多々ありました。後から聞くと、こうした対応は、孤独感のある院長の皆さんにとって、「誰か相談できる人は必ずできる」ので、やりやすかったと、後日言われました。
人や組織を動かすには、いろんなやり方があるということです。