2012年5月18日
1億未満の改修等の案件で、4回以上の入札でも落札しない例外的なものがありました。特定の設備のウエイトが大きいわけでもなく、他地域では、順調に落札しているような案件でした。
病院からは、医療機器関係なので、予定価格を引き上げてでも、早く契約に漕ぎつけたいと強い要請がありましたが、近々、100億近い大型案件が、その近隣で、予定されていましたので、私としては、どうしても当初の予定価格で落札させたいと考えていました。
しかし、実際には良い方法を思いつかないので、正直、悩んでいました。とりあえず、当初の予定の7回入札までは、まだ、時間があるので、その間で、新たな手法を考えつくことが必要でした。
刑事捜査の原則である「現場百回」ではありませんが、その案件に関する入札の状況を詳細に確認しました。応札した事業者名・事業者別の価格・事業者間の価格差などを一覧表にして確認をしたところ、「あれ?」と気づきました。
この工事は設備系の工事でしたが、それぞれの事業者の応札価格は、ほぼ同じで、その順位変動も、ほぼありませんでした。また、常に最も安い価格を応札する事業者は、営繕職の中堅に聞くと、当該地域で大きく工事シェアを占めている業者とのことでした。他の地域では、最も安い価格を応札するのは、多くは、地域の大手ではなく、中堅以下が普通でしたので、この地域の異色さが際立っていました。
私は、営繕職の中堅に聞きました。「どう思う?」「談合ですかね」。証拠は全くありませんでしたが、私も同じ感覚でした。
しかし、仮に談合を追及しても、工事が進まないという現実は変わりませんので、何らかの手法で契約にこぎつけ、「談合をしても無駄だ」と、その地域の建設・設備事業業者に理解させることが大事と考え、営繕職に、「何かよい方法があるか? 他地域から事業者を連れて来てもよい。」と伝えました。
国直営時代は、地元業者への優先発注などのルールもありましたが、国立病院機構では、そうした「経営とは無縁」の制約を離れて、民間と同じように、効率的な契約を結べる可能性がありましたので、これを今回、実例にできないかと考えたのです。
1回やれば、後は、前例として、後輩たちが続くはずだからです。ここで、本部で、契約や工事進捗情報を整理し・集約していた効果が出ました。
営繕職から、「A県の○○の案件で、比較的安い価格で契約した事業者がいます。書類を送って入札参加を依頼しますか。」との報告があり、「A県は、問題地域の隣の隣だろう。参加してくれるかな。」と疑問を発したところ、「○○○ライン(写真)を通ればすぐの所です。」との返答を聞いて、すぐに動き始めました。
結果としては、その事業者には落札をしませんでしたが、前例に反して、他県から事業者を連れて来てでも、目標価格で契約を成立させようとする国立病院機構の気概が通じたのか、地元の事業者の一社(工事シェアの大きな事業者ではありませんでした。)と、予定価格内で契約することに成功しました。
乱暴と見える手段を講ずるときこそ、冷静な分析と合理的な判断が必要でした。