Episode13 「完成度80点で動く 動き始めたら最後まで走り抜ける」

2012年5月8日

役員を知り、病院を知り、部下を鍛えて、新しい建設投資を打って出る環境は、概ね整いました。実施に移す前に、自分の頭の中で、これをやるとどうなるか? 漏れはないか? などと繰り返し考えたものですが、結論は「やってみなければ わからない」という当たり前のことでした。

その頃、たまたま建築分野の業界誌から原稿依頼があり、これは良い機会と判断し、理事長名で、国立病院機構の今後の投資規模と建設投資の方針を公表することに同意していただきました。

誌上では、国立病院機構は、今後の投資規模が大きい魅力ある相手であることをアピールしつつ、ターゲット価格水準を明示することで、建設会社等に対し、国立病院機構は、民間並みであることを宣言しました。

これを最後の事前準備とし、まずは1億未満の改修等の案件から、新しいチャレンジを開始しました。

 

予定価格は従来の半分以下、落札しない場合は7回まで実施(もちろん7回実施を迅速にするための入札手続書を配布し、入札不調の場合には財務部が支援するという対策は講じて)するという、病院にとっては、これまでとは全く違う「驚天動地」の指示を文書で出しました。

各病院からの反応は予想通りで、「こんな価格で落札するはずがない」「複数回実施の時間がない」といった声が部下達に、一方、「財務部は横暴だ」「ちゃんと見ているのか」等の声が役員に届きました。

私の予想は、価格が下がって最終的にメリットを得るはずの病院が、最大の反対勢力になるはずという読みでしたので、役員の方には、「財務部に任せていると答えてください。3か月で結果を出します。」と事前に説明を済ませてあり、部下には「私に言われてもどうしようもありません。部長の指示です。宜しくお願いします。」と回答しろ伝えてありました。責任は部長に集めるということです。面白いもので、こう役員や担当者に言われて、直接、私にクレーム等を言う病院は、ほとんどありませんでした。言っても無駄と思われたのでしょう。

 

さて、私には、自信はありましたが、「もしも」を考えると、平静なふりをしているものの心臓は・・・という感じでした。当然、最初の入札で契約できるところはなく、前回説明した工事の進捗管理表による財務部内の会議の雰囲気も、最初の月は暗い感じでした。ところが、多くの案件は入札4回目までで落札してしまいました。

我慢比べで勝ったということでしょう。最初は、国立病院機構の方針を疑っていた業界側も、1~2か月の入札の繰り返しで、本気であることを実感されたものと思います。当然、その落札の結果を一覧表にして、全病院に配布しました。「時代が変った」と感じた瞬間です。

その後は、本来の目標であった数十億~百億単位の大型案件の価格低下も、概ねスムーズに進行でき、建設価格も長期債務も国直営時代の半分(写真)になりました。
 

踏み込まないと高い成果を得られないことを再認識しました。

また、公務員を辞めることを最終決断できた瞬間でもありました。